【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -21-
青い空の下、再度衛星携帯のアンテナを伸ばし、短縮ダイヤルでコール。相手が出た。
「Hi,It's Lemuria.Please pick up me and friend,with use cloaking.」
あとは待つだけ。1分もかからない。
「あの……」
「暴風が吹くから顔を腕で覆ってください」
彼女は言いながら、ウェストポーチをごそごそしてワイヤレスイヤホン近似の機械を耳に挿した。
「来ます」
ほどなく一陣の風が上空より吹き降りて広がり、順次風速が上がって轟轟たる暴風になった。
園内を歩いていた人々から小さな悲鳴、走り逃げる人も。すいません。
“なにか”が二人の前に舞い降りる。ただその“なにか”は重量と大きさの感覚は有するが、目には見えない。
風が収まって木の幹に見える部位に、黒い四角い領域が出現した。
cloaking(クローキング)。いわゆる光学迷彩である。実際には二人の前に空飛ぶ帆船が着陸しており、見えているのは“船がいなければ見えるはず”の光景。
「どうぞ」
彼女は黒い四角い領域……舷側通路を彼に示した。
「見られたくないので急いで欲しい」
「お、おう」
持ち前の運動神経を発揮してヒョイと飛び乗る。
彼女は昇降スロープを出そうとしたが、平沢が腕を伸ばして引っ張り上げてくれた。
「ありがと」
ウィンクしてみせると彼は見て判るほど頬を赤くし、己の手のひらを見つめた。
「福島県三春町、お願いします。INS使うほどは急いでいません」
中は白く照明されており、目が慣れてくると、縦に長い6角形断面の空間である。
スライド式の舷側昇降ドアが閉まり、上昇に伴って下方へ押し付けられるようなG。エレベータでおなじみの感覚だ。
「これ、あの、窓際に浮かんでいた船、だよな」
「そうです。国際救助隊アルゴ・ムーンライト・プロジェクトの所有する飛行帆船です」
一度、教室の窓際に呼びつけたことがある。ほとんどの生徒はその暴風に逃げ出す姿勢を取って見ていないが、彼は見ていた。
ちなみに乗せた以上は秘密を前提に多少情報を開示してもいいと思うのだが。
そんな時間はなさそうだ。
耳に挿した通信機にピン音。
「間もなく到着します。どこへ?」
「えっと……」
住所に基づきこの船が下ろせるスペースを検索。
集落の外れ、アスファルト舗装が途切れたところに小高い緑地あり。
特にGを感じることもなく、着地に伴う小さな衝撃。
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