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2021年10月

【理絵子の夜話】サイキックアクション -19・終-

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「あー、ザビエルだっけ、ルイス・フロイスだっけ。答えにくい質問をされて困ったとか」
「そう。そもそも平和の概念が違うから、価値観が違うから、お互いになぜその質問が出来るのか、なぜそれが“理想”なのか、根本的にかみ合わない。食べ物一つとっても、神様の思し召し、じゃなくて、自力で捕ってくる物だし、命を等価に扱うしね。“いただきます”は命への贖罪と生産者への感謝だけど、天にまします我らの父よ、は、父そのものへの感謝だしね」
 彼女らは相互に、納得した。
 および、これで決着が付いたわけではなく、人間自体の属性であるなら、今後も攻撃がたびたび来るであろうことも。
 そのために自分たちが集められたのであろうことも。
「自分の子を孕ませて、産んだら殺すって」
「野生では、よくあること。言うこと聞かないと殺すってのも、然り」
 立ち位置と今後を納得する。そして、対処できるであろうことも予感はある。
 問題は。
「手近に他に霊能者っていなかったっけ」
 学校にはいない。が。
 日本全体を考えたならば。
〈そういう情報は、我々が仕入れます〉
 大蜘蛛が応じ、同時に聞こえ来るあちこちからの遠吠え。
「犬は霊が見えるとか」
 古来人間のペットであること、犬神とオオカミと大神。
 全部つながった。
「待ちましょう。向こうから来る」
 理絵子は言った。
 それは、日常に割り込むように、忍び込む形で、挑んでくる。
 その後、警察や消防が“校舎爆発”の地に到着したとき、彼女たちの姿は無かった。
 未使用校舎に天然ガスが充満、それが鑑識の結果であった。

サイキックアクション/終

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -24-

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「タクシーだ。親父だろ」
 背の高い進少年が垣根越しを見通して言い、程なくタクシーであろうクルマは走り去った。
 足音が近づき、垣根の向こうに人の姿。
「お、え?」
 縁側の3人は理論上あり得ない組み合わせであり、驚愕しか生まない。
「おばあさまはこちらにお着きになっていました。私は進君のクラスメートで相原姫子と申します」
「ああ、ああ聞いてます。この度は巻き込んでしまったようで本当に申し訳ない。母さんよう、冗談じゃないぜ?どれだけ……」
 彼女は怒気孕む父殿の目を見、手のひらを掲げて制した。
「悪いと思ってるよ……ごめんな……手間ばかりかけてよ。ふと、おれだけこんな便利なところで至れり尽くせりでいいんだろうかと思ってしまってよ」
 手間ばかり。この語に彼女は引っかかった。
 すると進少年。
「ばあちゃん、居づらかったか?」
 祖母殿は目線を外し、少し置いて。
「思っちまうんだよ。おれだけご馳走食べて、便利な生活して。じいさんに申し訳ないなって。お前らにも気を使わせてしまってな」
 炊事・洗濯……昭和的主婦業を祖母殿は全てこなしてきた。それが東京に行って全て上げ膳据え膳。
「進君」
「は、はい」
 彼女に名前で呼ばれてドギマギ敬語。
「普段、お家での家事はどなたが?立ち入ったことを訊くけど」
「かーちゃん」
「おばあさまが参加できるとすれば?」
 すると、人が増えたこともあり、自動食器洗い機、ロボット掃除機を導入したと答えた。後は洗濯だが、物干しは2階。よって、
「ばあちゃんに階段は怖いなって」
「お料理は」
 すると父君。
「妻が本見てカロリーバランスやら考えて作ってますわ……って、母さんすることねぇな。え?ひょっとしてそういうことか?」
 彼女は、祖母殿がうつむいてこちらを見ていないことを確認してから、小さく、父君に頷いて見せた。
「私、グループホームとか顔を出しますが」
 これに祖母殿は顔を上げた。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -18-

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騙されるか、彼は一瞬そう思ったようである。が、神性を備えた異国の娘に抱きしめられて彼は一介の“男”に戻った。
 “憑きもの”が剥がれる。
〈主(あるじ)よ、ここは我が……〉
 声と共に、理絵子の身の中から現れて貫く漆黒の長剣一閃。
 魔剣クリュサオールであった。黒い人型のようなものが中空で串刺しにされている。
〈美砂殿。我が力援用されよ。汝にしか能わぬ〉
 それは、美砂だけが、条件が整った時のみ、可能な力の発露を示した。
 瞬間移動テレポーテーション。但し彼女のそれは所要の目的地に送るものではない。
 時空を越えたいずこかへ投擲する。
 さらば……クリュサオールの感情と共に、パン!という、風船が割れたような破裂音がした。
 腕の中が脱力する。等身大の人形のように、にわかに筋骨が力を失い、グニャグニャになり、どころか皮膚が裂けどろどろとした内容物があふれ出し液化して広がり。
 骨と、“人体の70%は水分”を彷彿させる汚穢な染みの広がった姿に変わった。
 獅子王と、魔剣の意識が追跡できない。
「ゾンビだね」
 美砂が一言。理絵子は思わず我と我が身を見回した。それの残滓が付着してはいないだろうか……気にするなと言う方がムリ。
「整理していいでしょうか」
 登与が言った。

・地球在来種の魔族でもなく、外来のそれでもなく、人類が発達してくる中で獲得した魔性
・宗教や正義の名の下に精神肉体両面から攻撃をしてくる。ターゲットは“日本”

「国家国民?」
「恐らく。人類が獲得した魔性にとって、“和をもって貴しと成す”日本の在り方は気に入らない。征服者というスタンスが得られなくなるし、付随する人間としてのあらゆる快楽を欲しいままにする権力も存在しない」

次回・最終回

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【魔法少女レムリアシリーズ】テレパスの敗北 -23-

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 電源を入れるとクラシック音楽。すなわちこの地域の放送周波数に合わせたまま。
「ああ、済まないね……」
 祖母殿はラジオを傍らにコトリと置いた。
「まぁ、お二人ともここへ来ておくれ」
 ラジオを挟んで着座を促される。
「進、ほら」
「お、おう」
 彼を促し、率先して座る。
 祖母殿が口を開く。
「まずは……いきなり飛び出して済まんな。いたたまれなくなってな。ほんでこご来だはいいけど携帯電話があるわけでなし、ここの電話も止めたでね。連絡しようがなくてよ」
「常磐線から来られたとか」
「海へ行げでねっがらな。新幹線じゃダメだ」
 件の原子力発電所は太平洋側にある。当然、避けたくなる。
 うぐいすの鳴き声。
「わぁ、きれいな声。初めて聞いた」
 彼女の感想に祖母殿は微笑んだ。
「おめさん、進が初めで此処(ごご)で春告げ鳥聞いた時と同じだな」
「え?」
「そうなんですか?」
 二人は驚いて祖母殿を見た。春告げ鳥はウグイスの別名。
「ああ、じいさんが庭いじりしてて驚かしちゃなんねがらってハサミ持ったまま固まってよ。人形みだいだって……ああ、これは進じゃねがったか。彰(あきら)か」
 平沢進の父君であると彼女は察した。
 と、突如祖母殿はしょげたようにうつむいた。
「ごめんな。オレばっか進と遊んでよ。挙句に厄介になってまっでよ。じいさんに申し訳なくてよ」
 ラジオに向かって。
「それでここへ……」
「迷惑かけてすまんな。クラスメートちゅうこどは学校抜けて来ただが?しかしめんこい子だなおめさんは」
「人命にかかわる事態かも、という第一報でした。なら、天下御免ですよ……めんこい?」
 地面にたたきつける日本の古いカードゲームの“めんこ”なら知っているが。
「か、かわいい、って意味だよ」
 説明する平沢進の耳まで真っ赤。
「あら。恐れ入ります」
 彼女が応じると、ウグイスが唐突に飛び去った。まるで逃げるように。すなわち。
 程なく、クルマが止まった。

(つづく)

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【理絵子の夜話】サイキックアクション -17-

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「違う。こいつは……」
 その生涯を殆ど戦乱の中で過ごし、追って獅子王と呼ばれた男であった。
 むろん英雄である、いわゆる“十字軍”を派遣した側では。
 そこで登与がロザリオを示してみせる。我々は敵対する者ではない。しかし、
〈偽なり異邦人〉
 その反応は彼女らの外見“人種”に起因する情動とすぐに判った。
 アングロサクソンキリスト教徒にあらざれば人にあらず。
 キリスト教原理主義と結びついた人種差別。
「霊をしてなお肌の色を価値と見る哀れで笑止なる者よ、去ね(いね)」
 登与はロザリオを突きつけるようにし、言った。
 対する返事はウォー・クライ。すなわち戦士が挑みかかるときに放つ咆哮。
 獅子王と称された男の手に剣が“沸いた”。
 何か途方も無い力がその剣には宿っている。それは誤謬を誤魔化すための信念を十重二十重にまとった、

 いわば、呪詛の集合体。

 剣が登与へ向け振り下ろされる。だが、彼女は微動だにしなかった。
 ガラスが割れるに似た、あるいは鍛冶の槌が振り下ろされるに似た、鋭い金属音。擬音でガチンとでも書くか。
「邪なる者破れたり」
 それは元々、オカルト雑誌の裏表紙に載っていた“魔力を備えたロザリオ”を買った物と彼女に聞いた。
 それこそ邪な存在であるはずだが、今ここに、3800円のクロームメッキの十字は淡い金色に輝き、邪悪な霊剣を受け止めているのであった。
 果たして驚愕か、獅子王は動作を止めた。
 理絵子に示唆が下る。その刹那に自分のなすべきことは一つ。
 素手で剣をなぎ払う。横から叩けば傷も付かない。勇者の大剣は吹っ飛ばされてガシャンガシャンと二転三転。
 油断というか、意表を突かれたのであろう。小柄な東洋の娘に必殺技を無効化され、縋る術なし。
 次は何をされるのか……そんな目で怯えるような獅子王を、
 理絵子は抱きしめる。
 意図して意表を突くために。
「敵対と戦闘に生きた貴殿を慰謝する者が無いなどあってはならぬこと」
 自分を超能力者と知らぬでも、巫女属性の持ち主だと言うクラスメートは多い。
 その属性こそは、今ここで発揮されるべき。
「愛し愛されることすら政略とされた貴殿の生涯に永久の安らぎを」

(つづく)

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