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【理絵子の夜話】禁足の地 -01-

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 理絵子(りえこ)の住む街には立ち入りを制限した“禁足地”が存在する。
 武蔵野の面影を残す広葉樹の丘陵地、および、その周辺をぐるりと囲む草ぼうぼうの湿地帯で、応じて手つかずのままである。甲州街道から脇道へ脇道へ入って行き、最後はけもの道かと思うような細い砂利道の終点にそれは存在する。鳥居がなければ境目が判然としない。
「おい黒野(くろの)」
 ニヤニヤした男子生徒が理絵子を呼んだ。軽薄な男であり、ネット上で“チャラい系”“パリピー”とカテゴライズされる系統。彼女ら中学の制服はセーラー学ランだが、彼らは上着のボタンを全て外し、ワイシャツをスラックスの外に出している。シャツインはダサいから、だそうな。
 やれやれと彼女は読んでいた本を伏せ、席に座ったまま身体の向きを変える。長い髪がさらりと流れて陰りを作り、その奥で黒曜石を蔵した瞳が光を放つ。
 ろくでもねーことだ、と彼女はまず判じた。
「お前文芸部オカルト担当だって?」
「まぁ」
 必要最小限以上のことは言わない。清楚で真面目な学級委員で通っているので、砕けたところを見せる気はない。
「罵倒してくれ」
 男子生徒はそう言って携帯の動画を彼女に見せた。暗闇で男が喋りながら枯れ草をガサガサ踏む音。
「お前ならこれどこか判るよな」
 かの禁足地である。
「宮内庁の土地じゃんよ。不法侵入じゃないの?」
 ありきたりなことを言って軽蔑のまなざしという奴をくれてやる。禁足地よりその“けもの道”を奥へ進むと慎ましい古墳(前方後円墳)があり、応じて宮内庁管轄と言われている次第。ただ、実際は知らない。一方でネットの空撮は拡大不可能なレベルしか無く、戦中戦後に米軍が写した航空写真は一面が霧の中。この辺も“肝試し向き”の因子を与える。
「何か映ってるか?何か感じるか?」
 肝試しで入り込んだに相違なかった。類似の動画はネットで多数目にする。いたずらでも好奇心でもどうでもいいが、経緯と理由に対する敬意を感じない。“そっとしておいて欲しい”という共通の意図が判らぬか。
「別に」
 理絵子はそれだけ言うと身体の向きを戻した。霊能者とウワサされていることは知っている。相手にするだけ馬鹿馬鹿しいという身体アクション回答。
 ただし、本当にそうだと知る者はこの学校に4名だけいる。

(つづく)

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