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【理絵子の夜話】禁足の地 -02-

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「ぎゃははシカトされた」
「やべー黒野冷てえのたまんねぇ」
 下品な笑い声複数。
 再度本を開こうとすると、すっと傍らに歩いてくる女子あり。
 その知る4名のウチの一人、名を高千穂登与(たかちほとよ)という。隣のクラス。全校公認の霊能者。わけあって超能力でケンカしたが今は仲良し。醸す雰囲気と美貌の故に天使と呼ばれる。
“禁足の地”に関わる話で来てくれたに相違なかった。
「うっわ登与ちゃんだ」
「何?俺らのクラス天国?」
 文字通り下馬評。流れる黒髪と、深く澄んだ瞳と、纏う静謐。
「いいの?」
「ウワサだけって設定だし」
 この声と同時に。
〈男の子達止めなくていいの?放置しておくと悪化して結局出て行かなくちゃならないことになる気が〉
〈そもそもダメとされてるところに入るなって私がわざわざ注意することじゃないし〉
 やりとりされる“心と心の直接の会話”。要はテレパシーで会話とは別に意思疎通をしている。
 登与の思いは、明らかに禁足地へのイタズラ目的を。超常の力持つ自分たちが対処しないのは問題ではないのか。対し、理絵子の判断は、“侵入禁止”が形而上からの警告であるなら、書いてある通りにすれば良いだけの話という単純なもの。
 “ガチでやばい”禁足地なら、応じた怖いことになるのでは、と登与は懸念している。ヤバさを自分たちが感じ取れない、イコール意図的に隠されているレベルのヤバ差かも知れない。それは判る。だが、だとするならば、自分たちの超感覚センサにそういう示唆すら無いというのはあり得ないと思うのだ。
 最も、常時力が作用しているわけではなく、何らかの“スイッチ”なのかも知れないが。
 その時が来れば判る、という奴だ。
〈放置?〉
〈いけないことなら、御沙汰があるでしょ〉
 応じたら、登与は納得したように背を向けて去った。
 ここまで数秒。会話に重ねてなされたとは誰も気付かない。
「あれ?登与ちゃん行っちゃうの?」
「ここ天国じゃないから」
 登与を追う下卑た視線を理絵子は遮った。
 自分に男子生徒達の目が向く、その間に登与の背中は廊下の向こうに消える。
 そして自分も席を立つ。
「邪魔」

(つづく)

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