【魔法少女レムリアシリーズ】彼の傷跡 -03-
“敵意”は基本向けられた瞬間にそれと気づく。それを遮断するほど“彼の気持ち”が強いということか。
まぁどうでもいい。なるほど通学路には不向きかも知れぬ。
ただ、自分は今、“女子一人”ではない。それこそ、そんな事態に対応したいと、立候補してくれたのが他ならぬ平沢であるが。
「お前の彼女か?ヒラ公」
敵意むき出しの女の声が後ろから掛かるが、それは罠。
振り返る……フリをして腰をかがめ、同じく振り返ろうとする平沢の袖を引っ張って制する。ちなみに、彼女のその動作は、飛び道具、有り体に言えば銃弾が飛んでくる場所にいるからこそ身についた動作。
行く手、左側のツツジの植え込みから躍り出てくる男1名。
何か持っている……催涙スプレー。
肩掛けしていた通学カバンを彼女は投げつけるべく外しに掛かる。
この間に平沢は彼女の手指と物音によって目線を後ろに向けることなく、出てきた男に気付いた。
その瞬間の一瞬の震えを彼女は見逃さない。彼の恐怖と逃避。
否。
アドレナリンの分泌、恐怖を超える勇猛、彼女より素早い肩掛けカバンを外すアクション。
平沢がカバンを投げる。男がスプレーの噴霧ボタンを押す。
噴霧されたスプレーはカバンに跳ね返され、噴霧した本人に噴き掛かった。
更にカバンがスプレー男に命中する。
プシュッ、ドカッ、および「がっ!」という声にならない叫び。これで数秒。
スプレー男はもんどりを打つ。固く鈍い音が聞こえ、頭部を舗道に打ち付けたことが知れる。
平沢進は“仕事”をした自らのカバンを取り返す。
そして、カバンの端からはみ出しているバットに手を伸ばし、グリップをつかんで引き抜く。
それを見たスプレー男の表情が驚愕を形成し、もうろうとしているであろうかぶりを振って舗道に手を突き、起き上がろうとする。
「そんなことしちゃっていいのかな?ススムクン?」
背後の女。バットで殴ると警察沙汰にするぞという意味であろう。
そこで、彼女がもう一本のバットを手にした。
「私がやりゃいいか?」
肩に担いで振り返ると女はスマートホンのカメラをこちらに向けている。暴力事件に仕立てようという腹づもりらしい。
示唆。罠が実行される。足下。
釣り糸を引っ張って自分たちを転ばせようという策と知る。それら一連の動きは自分たちの行動パターンを把握しており、待ち伏せしてどうにかしようとする強い意志を感じる。
釣り糸を上からバットの先でガンと押さえつける。植え込みから釣り糸を引っ張っていた男達が想定外の荷重に逆にバランスを崩して植え込みに倒れ込む。
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