【理絵子の夜話】禁足の地 -07-
それは一見、鉄さびで赤くなった石がゴロゴロしているようだが。
それらの石は、頂部が平坦で、一定間隔を置いて並んでいる。
飛び石として人為的に配置された。
「行きましょう」
「うん」
飛び石を丁寧にたどって行く。これ以上靴が濡れるのはイヤだという部分もあるが、石が意図して配置されたならば、意図通りたどるべきだと思うからだ。
ちなみに飛び石の両脇、草本が踏み固められた部分はそのまま真北へ小道を形成している。ひょっとすると彼らが強引にラッセルし、応じて飛び石の存在が明らかになったようにも思われる。
金気水と飛び石は緩く左右に曲がりながらざっくり北北東へ向かう。振り返ると草に埋もれて帰路が見えぬ。
「あいつら夜中にどうやって行ってたんだろ」
「ドローンで動画に撮った奴がネットにあって、緯度経度の座標が出てるんだって。そういうGPSアプリもあるから」
「禁足地が秘匿されてた意味がないね」
歩くこと7分。ただ、飛び石を選んでいるの時間を要しただけであり、距離はさほどでもない。
理絵子は足を止めた。
墓石……のように見えたがそうではない。苔むした石柱。
花崗岩。風化し、応じたさび色の付着物。パッと見1000年クラス。
彼らが撮影してきた“ストーンヘンジ”の一部であることはすぐに判った。ただ、誰か触った痕跡はなく、ここの“王道侵入ルート”ではないことを示唆する。
「見て」
登与が指さし理絵子は顔を上げる。
草の中に土管が並んでいる……否否。
石柱が倒れているのだと理絵子は判断した。少し離れて右側にも同じように石柱を構成したであろう円柱状の石が幾つか見える。
過去、鳥居が立っており、地震などで倒壊したのだとすれば説明が付く。
従って、向かって行くべきは。
倒れた柱の並びと並行し、北の方向。
緩やかな下り勾配。および、
気づく。極めて静かである。
風が吹いているので応じて草本が揺れ動き相互に触れあい、サラサラと音を立ててはいる。
しかし、5月の草むらにしてはそう、生命感が薄い。それは屋上から遠隔視した時のイメージと合致する。
動物がいないのだ。昆虫も含めて。
「結界?」
「違う。感じないでしょ。そういうのでなく、生き物が入れない」
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