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【魔法少女レムリアシリーズ】彼の傷跡 -05-

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 ただ、野球の試合などを通じて、彼がここに通っていることが露見したのだろう。
 彼女は下卑た笑いを作ると、
「そんで悪さのあげくに小遣い無くなって、昔のアイツを揺すってカツアゲたろかってか?あ?るなちゃんよ。月って名前のくせにゲスだなお前。月に月のもの出ないように仕置きしてやるか?股から手ぇ突っ込んで子宮引きずり出すぞゲロ女」
 マフィアに囲われていた孤児とか付き合いがあるので、幾らでも不良言葉は出てくる。
 すると。
「黙って聞いてりゃ随分とイキってんなお前」
 血の気が上がってきたのは植え込みに倒れ込んでガサガサしていた男。ジタバタしたあげく、ようやく舗道に片手が付いたのであるが。
 彼女はアニメで習った蔑みの目線、ジト目という奴を上からくれてやると。
「私殴る?いいけどそこから1センチでも動くとお前の目の前とお前の身体の周りにワンサといるドクガの毛虫がお前を襲うよ」
「な……」
 何か言い返そうとして、視界眼前をうごめく多数の毛虫に気付いたらしい。男はツツジを“かき混ぜた”状態になり、折から繁殖していたドクガの幼虫達が集まってしまった。
 すると。
「このクソ!」
 釣り糸を引いていたもう反対側の男である。勢いよく立ち上がろうとし、そのまま足をもつれさせて倒れ込む。
 足首に絡まる釣り糸。
「いてぇクソ……」
 力任せに足を引っ張るが釣り糸が皮膚に食い込んでギャーと言う羽目になる。
「クソクソうるせぇんだよ。そんなに出したきゃそこのスーパーでトイレ借りてして来い。行ければだけどな」
 そこでゲホゲホ咳き込みながらようやく立ち上がれそうなのがスプレー男。
 彼女は振り向くなり指さしてゲラゲラ笑ってやった。嘲笑という奴だ。
「鼻水鼻くそ涙ボロボロ。ついでに言うと小便漏れてるぜ。イキって結局馬鹿なガキそのものじゃねぇか。そんなんで私に殴りかかろうなんざ100年早い。おととい来やがれ」
 さんざん言って、バットを振り上げる。
「うわ……」
 とはいえ、そこまでで良かった。男は本当に殴られると思ったらしく、小便を漏らしてしまった。ズボンに広がる黒い染み。
 そこで。
「おら!どうしたオシッコ漏らし!」
 一拍置いて。

「掛かって来いや!」

 彼女はその場の誰もが度肝を抜かれて目を剥く大音声を張り上げた。オペラ歌手と同じ発声法で骨を共鳴させ、体内空間全てを使って増幅放出させる術を有する。

(つづく)

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