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【魔法少女レムリアシリーズ】彼の傷跡 -07-

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 彼女は“企んでる魔女”の笑みで見捨てられた男達を見回した。
「あいつは女だから手加減してやった。だが、お前らはそうはいかない。私は友達を傷つける奴は絶対に許さない。卑怯の塊が女にヘラヘラしてるとかゴキブリのクソほどの価値もねぇ」
 バットを振り上げる。
「わああああああ!」
「ごめんなさい許して下さい。言われてやってただけなんですぅ」
 なんだこいつら。すると。
「俺、こんな奴らに……」
 おびえていた自分がバカみたいだ。平沢の言葉を補足すればそうなろう。
「裁く権限はあなたにあると思うよ。殴れというなら殴るし、何なら殺してもバレやしない」
 呼応するようにカラスがアーアー声を上げ。
 ツツジの植え込みからするりと現れたのは、赤い斑がいかにもと思わせる毒ヘビのヤマカガシ。
 男達はパニック寸前。何なら3人揃って漏らしそうな勢いだ。
 対して、平沢進は静かに一言。
「いや、俺はこいつらと永遠に会わないで済むならそれでいいよ」
「そう」
 彼女はそれを聞いてバットを下ろした。ただし、その実態重量以上にゴン、と重い音を立てて。さながら鬼に金棒のように聞こえた。
 彼女は立てた金棒の頂部を指で押さえた。
「3秒間、お前達に永遠に別れる権利を与える。私がこの手を離して、このバットが倒れる前に、ここから立ち去れ」
 彼女はバットを舗道に立て、手を離した。
 揺らぐバット。
「123っ!」
「わーっ!」
 わめき散らし、叫び声を上げ、こけつまろびつしながら男達は立ち上がり、不格好に舗道を走って去った。乱雑に舗道が濡れているが、まぁ知ったこっちゃない。
 バットを受け止め、グリップ側を平沢進に向けて、返す。
「お、おう」
 丸い目、もう少し言うと“人間じゃないもの”を見る目で彼女を見ている。
 説明、する必要があるようだ。
 その前に屈強な味方達を開放する。「ありがとね。助かった」これでヘビやカエルは茂みに戻り、カラスはバサバサ飛んで行く。
 ただ、ネコは足下。まるで付き従うかのように。彼女はしゃがんで、そのネコを撫でさすって。“言うべき内容”のレベルと順序を考える。
「ひとつ、あなたに言っておくことがあります。あの者達には催眠術を掛けました。永遠にあなたのことを思い出すことはありません」

(つづく)

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