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【魔法少女レムリアシリーズ】彼の傷跡 -09・終-

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 その理由を彼女は説明出来る。そしてそれは言葉にすれば彼を次のステップへ踏み出させる後押しになろう。
「あなたにたくさんの我慢を、いっぱいいっぱい押し殺してきた辛い気持ちの積み重ねを感じます。体格のことや外見ことであらぬ誹謗中傷を受けてきたこと……でも、私はあなたが努力する男の子で、勉強の遅れを取り返したいと新たに努力を始めたこと知っています。それが最も大事なことだと私は自信を持ってあなたに伝えます。あなたの私に対する好意に応えることは出来ないけれど、友達でいてはだめですか」
 彼女は、手のひらを差し出した。
 彼は涙を止め、きょとん。
「友達……」
「そう。防空識別圏を設定しますという告白お断りの言い回しじゃなくて。気軽にくっちゃべる女子という意味で。女の子の友達」
 自分の提案はひっくり返すと「いたことないでしょう女友達」という決めつけになってしまって甚だ失礼なのだが、逆に言えば彼に条件が整ったという証明でもある。
 うん。これでいい。彼女は自分の物言いに自信を持った。
「いい、のか?」
「もちろん」
 ウィンクしてみせると、平沢はしゃがんだまま右の手を伸ばして来、彼女の手のひらを恐る恐る……おっかなびっくり、触れた。
 電撃に触れたように彼の腕が肩まで震える。その頬が目に見えて赤く染まる。
 彼女は震えで飛び出して行かないように握り返す。脂肪感ゼロでゴツゴツガサガサの男の手のひら。
 手首に触れて魔法を一つ。
 巻き付く毛糸。
「なんだこれ」
 平沢は手のひらを戻してじろじろ眺めた。
「ミサンガ。友達には強制的に付けさせてる」
「え、あれこれ結び目とかないじゃんどうやって……」
「そこは手品ですから。それは不思議なミサンガです。必要なことをあなたに教え、不要な時には出て来ません。試合で見つかると咎められるというなら、あなたがそう思えばそれは消えます……従妹のさくらちゃんに見せれば教えてもらえるでしょう」
 彼女は言い、ニヤッと笑った。こういう“後から自分自身意味を理解する魔法”は必要があるから働いたのだと知っている。
「お、おう。あれ?なんでさくらの名前知っ……」
「いいじゃん。帰ろ」
 彼女は先に立って歩き出した。

彼の傷跡/終

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