【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -02-
坂本美咲はぱっと目を見開き、
「じゃぁ彼とは付き合ってないんだ。でも、よく一緒に帰ってるけど?」
小首を傾げるが目線はきつい。
「何も。あれは諏訪(すわ)君のボディガードだよ。それに、普通にお友達でいる分には何も構わないじゃん」
諏訪君というのは喘息があって、行き帰り彼女が同行している男子生徒である。そこに平沢も同行している。
「好きなんだ」
逆に彼女は訊いた。
「え?あ、うん、その、気になってるというか……」
坂本美咲は急にしおらしい口調に転じ、うつむいて目を伏せた。
その諏訪君が福島と地縁があるため、原発事故と絡んで言いがかりを付けてきた女子生徒があるのだが、その言動にストップをかけたのが当の平沢である。従前、ひょうきん者でギャグ担当というポジションだった彼の、豹変ともいえる雄々しい態度に「ハッとなった」という。
以上坂本美咲は背景を語ると、
「姫ちゃんにお願いがあって。その、何でもいいんだけど、彼が触ったものが欲しいんだ。紙、鉛筆、消しゴム……」
「もらって来てもらえないか、ってこと?」
「そう」
「何かおまじない?」
坂本美咲は目を見開いた。
「何で判るの?」
「ご承知の通り慈善活動で手品をするので……」
彼女は言いながら、左右の手を交互に開いたり閉じたりした。
その都度、手のひらから紙に包まれたキャンディがコロコロ。なお、このマジックショーで彼女は“魔女のレムリア”と称している。以下、彼女をレムリアと書く。
「え?え?あ、あ。すごい」
「おひとつどうぞ」
キャンディを持たせる。
「演出上、魔術の仁義みたいなもの語ったりするわけですよ。恋の魔法で相手の持ち物に秘薬を垂らして、とかよくあるパターン。それでもしかして、と思ったわけ」
坂本美咲はキャンディをしげしげ眺め、包みを開いて口に含んだ。
おもむろに視線を彼女レムリアに戻す。
「じゃあ、本気だ、と言っても笑わないで聞いてくれるかな?」
まっすぐ見つめてくる。レムリアは坂本美咲がいつもひとりでいる理由を理解した。“素っ頓狂”なのだ。オカルト志向で応じて非・論理的であり、突飛な言動に行き着く。
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