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【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -03-

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「笑いはしないけど、正攻法じゃないと思うな。きっかけ作って声をかける、じゃないの?」
 一応正論。ただ、この娘の心はどうやら決まっているらしい。
「そう……だと思うんけど、姫ちゃんの言うとおりだけど。同じ女の子に協力してもらえないような奴に男の子の友達なんかもっとハードル高いよ」
 坂本美咲は花しぼむようにしょげて肩をすぼめた。それは演技だが本人なりの理解も含んでいよう。
 少し考える。ロジハラ噛ますのは可能だが傷つくだけであろう。また、ここで断れば彼女は反感を抱くとともに、自分がオカルト趣味を馬鹿にしつつ吹聴するのではという疑念を持つことになるだろう。
 それは求めていないし、結果として非生産的だ。
 目線を戻して。
「一般に魔法を使う場合、応じた制約や手順、禁止事項があり、それは協力者にも要請されることと考えますが、その辺を教えてもらえますか?」
 ちょっと声のトーンを下げて。すると坂本美咲は少し驚いたように目を見開き。
「え?あ、えっと……」
 四阿テーブルのナップザックの中から、取り出したのは古びた表紙の大ぶりな本。
“魔術の実践”
 分厚く、表紙をはじめ角の部分はボロボロ。貼り合わせがバラけてしまっているところも。
「古本屋で見つけたんだ。昭和13年だって」
 それは、坂本美咲にとって古さをアピールする物言いだったと思われるが、春先まで海外居住だったレムリアに“昭和初期”はピンと来ないようだ。
「見ても?何ページ?」
 レムリアに周辺情報はどうでもよくて、肝心なのは中身。
「ポストイット挟んであるところ。ページ同士貼りついて開かないところの前」
 表紙タイトル下のカタカナ著者名と訳者名。どちらも知らない名前。
 表紙をめくると前書きがあり、“あなたに幸せをもたらすために”著したそう。目次は基本的な心構えや習慣づけの促進が冒頭にあり、以下、タロットやルーン文字を使った占いの解説。金運、恋愛、呪詛。なお、当時の活字ゆえ書体(フォント)が古く、いわゆる“旧仮名遣い”なのだが、レムリアは文脈からおおよその理解が付くので一字一句は気にならない。
 恋愛に付箋がしてある。“友と呼べる者と共に永遠の愛を召喚”。
 思いを寄せる相手方の持ち物、人体組織片ならなお可。匂いを封じた小瓶でも可。出会うことから求めるならば、自分の血と混ぜて月明りを一晩当てた夜露を垂らし、迷いがあるときはルーンの声を聞いて指示に従う。血は冒頭の心構え、習慣づけを半年実践し、浄化された状態でなければならない。
 その習慣づけ。“朝の光より早く目覚めてその光を迎え、夜を無事過ごせた感謝を述べること。屠られたものを口にしないこと。飲み水は大地から沸き出でたもののみを飲むこと。”

(つづく)

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