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2023年1月

【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -11-

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「ステッキをどうぞ」
 振ると、先端から花束出現。
 坂本美咲は声も出ない。
「いかがでしょう。同じシナリオなら再現できるけど。私個人は動物をよく使うけど屋内イベントだとちょっとねぇ」
 レムリアは言いながら四阿の屋根の外、上空へ向かって手を伸ばし、オイデオイデの手つきをした。
 降りてくる風一陣。四阿の塀に止まる鳩。
 文字通りその辺にいるドバトである。丸い目で二人を交互に見、小首を傾げる。その仕草には知性をうかがわせる。
「呼んだの?」
「まぁ。はい、行っていいよ、ごめんね」
 レムリアは手のひらを開き、出てきたクルトンをひとつまみ鳩に咥えさせ、指をパチンと鳴らした。
 鳩がいくらかの羽毛を散らして飛び立って行く。
「すごすぎる……」
 坂本美咲は四阿の椅子、円形の壁に沿って配された木の板にへたり込んだ。
「平沢君ってあなたの手品見たことあるの?」
「フルコースはないよ。教室でやってる小ネタを見てる位。その辺はむしろ諏訪君が知ってる」
「諏訪君……」
 坂本美咲は口ごもった。
〝諏訪君が福島と地縁があるため、原発事故と絡んであることないこと言ってきた〟
「知っての通り平沢君は諏訪君の味方だし、諏訪君も呼ぼうと思ってる。どうしますか?」
 ちなみに彼に関わる風評被害の払拭にはこれ務めた。ただ、理論に基づく説明を〝ねつ造だ〟と言いつのる手合いはあった。
 坂本美咲は思い出したようにはっと目を見開いた。
「ルーンに訊いてみたい」
 それは今回拠り所としている魔法書の物言い、迷ったらルーンに訊け……ルーン文字の占いをせよ。
「そのシルクハットから出るよ」
 テーブル上、シルクハットに坂本美咲は手を入れた。
 文様の刻まれた水晶の小石。
 ギリシャ文字の〝Ψ〟に似ている。
「エルハツ(elhaz)……」
 坂本美咲は呟いて、そのまま水晶のルーンを見つめた。

(つづく)

【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -10-

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 坂本美咲が四阿の隅に向けてステッキを振り下ろすと、先端からおもちゃの花がポンと生えて開いた。
「あらギャグモードになっちゃった。物陰ってのがないからね。えーと、その花を抜いてみて下さい」
「うん」
 坂本美咲が言われた通りおもちゃの花を抜き取ろうと手で茎の部分に触れると。
 本物のコスモス1輪。
「え?え?」
「手品ですから。そういうのは女の子やお年寄りでもウケるよ。もう一度……えーとね、あなたのカバンをコツンと突いてみて」
「……もうわけわからない」
 坂本美咲は自らのスポーツバッグをステッキ先端で突いた。そして。
「言わなくていい。ありえないもの出てくるんでしょ」
 バッグのジッパーを開くと、世界的に有名なモンスター同士を戦わせるゲームに出てくるモンスターのぬいぐるみ。
 坂本美咲はあきれたようにため息。
「これ、主人公が相棒に設定したら頭の上に乗るよね」
 キツネを思わせる顔立ちだがウサギのような耳。
「頭の上に載せたら何をしたくなりますか?」
「シルクハットを……まさか」
 坂本美咲は出て来たモンスターを頭の上に載せると、シルクハットを被って、脱いで。
 別のモンスターにチェンジ。間抜けた顔のカバのような。
「もう一度」
 今度はアンモナイトのような。以下、シルクハットを扱うたびにモンスターの種類が変わる。
「え、何これおもろ」(面白い、の意)
 坂本美咲は自分自身面白がってシルクハットをひょいひょい。
「それ、子供たちに人気のモンスターに変えようとしてクソザコ(※)ばかりなら笑いが取れるでしょ」
 何度か載せ替えるうち、イモムシ形状のモンスターになって、先ほどのコスモスをその口に咥えている。(※クソザコ……糞雑魚の意。要するに格好悪くて弱い)
「え?何これ!」
「食べちゃった。どうしたい?」
「え……新しく出したい」

(つづく)

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