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2023年4月

【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -17-

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 リスからトカゲのモンスター。
 子供たちはざわついた。そして、そのモンスターがゲームのそれであると気づくや、成長した姿である火を吐くドラゴンに変えろとリクエスト。
「やってみたまえ」
「偉そうだぞヒラ」
 これは諏訪君。
「言葉を慎みたまえ、君は魔王の前にいるのだ」
「うるせーヒラ」
「そうだぞ黙れヒラ」
 このあたり子供たちが乗っかってくる。
「では、この子をドラゴンに……」
 帽子をかぶって、脱ぐ。
 間の抜けた顔をしたカバがモチーフのモンスター。
「ぎゃはははは!」
「だめじゃん」
「おかしいなぁ」
 もう一度、かぶって、脱ぐ。
 ドラゴンだが別のタイプで子供型。
「違いまーす。そのドラゴンじゃありませーん」
 もう一度。
 キツネと子犬のいいとこ取りをしたようなモフモフのモンスター。
「あ!」
 かわいい、という声が女の子から上がる。
「いいなー。欲しいなぁ」
 幼い声。サキはレムリアをちらと見た。レムリアは頷いて返す。
「どうぞ」
 サキは頭の上のモフモフモンスターを手にして女の子に手招きした。
「え?いいなー」
「あたしも欲しい」
 数名。サキは帽子から次々取り出して女の子たちに渡した。
「ずりー(狡い)。俺たちにもなんかくれ」
 男の子達の不満は当然。
「判りました何かあげましょう」
 サキは帽子からステッキを取り出し、宙へ向かって振り出した。
 舞い散る紙吹雪、まるで音のしないクラッカーを破裂させたよう。
 男の子達の目は一瞬輝いたが。

(つづく)

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【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -16-

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 観客が一斉に振り返る。
 女の子二人。レムリアと坂本美咲。
 マジシャンがよく身につけるスーツとシルクハット。レムリアのそれは白、坂本美咲は黒。
「あー、君か、認定試験の受験者は。入りたまえ」
 ふんぞり返って偉そうにして腕を伸ばし、オイデオイデ。
「もう入っています」
「細かいこと気にするな。こっちへ来たまえ。ちゃんと皆様にご挨拶しながら、な」
 平沢は観客席に両腕を広げるようにして指示した。それはショーの始まりの合図である。
 本番。
「……は、はい」
 坂本美咲は緊張気味。
「はいはい、帽子を手に持って。早くしないとあふれちゃうよ」
 見世物その1シルクハットの中からお菓子を出して配る、なのだが。
 坂本美咲の頭の上でハットが左右に動く。まるで中に何かいるよう。
 坂本美咲が慌ててハットを手にして裏返すと、中からリスがひょっこり。
 どんぐりを前足で持って食べている。
 坂本美咲は呆然としている。いきなりシナリオから外れているのだ。
 一方、リスの存在に気づいた女の子を中心に、どよめきと「かわいい」の声。応じてお年寄りの方々の口元も緩む。
 心つかめばそこまで。これで坂本美咲が困ってしまうというのは本意ではない。
「サキ、それは私のドジ帽子では?交換しましょ?」
 どうしていいのかと固まってしまった坂本美咲……“サキ”にレムリアは助け船。
「え?あ、そうかも。はい」
 白で統一しているレムリアと、黒で統一している“サキ”と。
 シルクハットを交換すると、
 マジシャンスーツも併せて入れ替わる。
「おおっ?」
「え?うそ何今の」
 サキも応じて驚いたわけだが、リスが彼女の頭の上まで駆け上がり、何らかリアクションをする暇を与えない。
「では魔王教官準備できましたのでよろしくお願いします」
 レムリアはそう言って促した。ここから事前シナリオ通り、“次々モンスター出現”。
「うむ、見せてもらおう。最初は“モンスターマジック”だったか?」
「あ、はい、そうです。このリスが次々、みんなも知ってるあのモンスターに変わって行きます」
 サキは進行を合わせ、まずは帽子をかぶせて、取った。

(つづく)

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