【魔法少女レムリアシリーズ】魔法の恋は恋じゃない -16-
観客が一斉に振り返る。
女の子二人。レムリアと坂本美咲。
マジシャンがよく身につけるスーツとシルクハット。レムリアのそれは白、坂本美咲は黒。
「あー、君か、認定試験の受験者は。入りたまえ」
ふんぞり返って偉そうにして腕を伸ばし、オイデオイデ。
「もう入っています」
「細かいこと気にするな。こっちへ来たまえ。ちゃんと皆様にご挨拶しながら、な」
平沢は観客席に両腕を広げるようにして指示した。それはショーの始まりの合図である。
本番。
「……は、はい」
坂本美咲は緊張気味。
「はいはい、帽子を手に持って。早くしないとあふれちゃうよ」
見世物その1シルクハットの中からお菓子を出して配る、なのだが。
坂本美咲の頭の上でハットが左右に動く。まるで中に何かいるよう。
坂本美咲が慌ててハットを手にして裏返すと、中からリスがひょっこり。
どんぐりを前足で持って食べている。
坂本美咲は呆然としている。いきなりシナリオから外れているのだ。
一方、リスの存在に気づいた女の子を中心に、どよめきと「かわいい」の声。応じてお年寄りの方々の口元も緩む。
心つかめばそこまで。これで坂本美咲が困ってしまうというのは本意ではない。
「サキ、それは私のドジ帽子では?交換しましょ?」
どうしていいのかと固まってしまった坂本美咲……“サキ”にレムリアは助け船。
「え?あ、そうかも。はい」
白で統一しているレムリアと、黒で統一している“サキ”と。
シルクハットを交換すると、
マジシャンスーツも併せて入れ替わる。
「おおっ?」
「え?うそ何今の」
サキも応じて驚いたわけだが、リスが彼女の頭の上まで駆け上がり、何らかリアクションをする暇を与えない。
「では魔王教官準備できましたのでよろしくお願いします」
レムリアはそう言って促した。ここから事前シナリオ通り、“次々モンスター出現”。
「うむ、見せてもらおう。最初は“モンスターマジック”だったか?」
「あ、はい、そうです。このリスが次々、みんなも知ってるあのモンスターに変わって行きます」
サキは進行を合わせ、まずは帽子をかぶせて、取った。
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