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【理絵子の夜話】城下 -06-

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 親子を追い抜かし、九十九折りを上ること4往復くらい。
 視界が開け、麓の木立の向こうに、多摩地域、更に都心のビル群が霞んで見える。なるほど見通しがきくのは城の立地に適すであろう。
 ここに分かれ道。標識があって、そのまま山頂へ向かうか、城の周回コースに入るか。
 超感覚は何の反応も示さない。
「記録、磁針アプリ、方位磁針共に正常。午前9時15分」
「はい」
 当麻がノートに記入する。
 小型のカメラ三脚を取り出し、地面に据え、カメラ設置台(雲台)が半球形で自由に動くのを利用し、油滴式の水平器を載せ、水平を取って方位磁石を載せる。
 針をスマホで写す。
「記録終わり」
「では、出発」
 山頂に行く人の数を100とすれば城址を目指す人は5人位。
 木立に覆われて日陰になる。前にも後にも人影はなし。それは往事、城の姿を都合良く隠したであろうと判断される。
「急に寂しい感じ」
 長坂が呟くが超感覚は何も言って寄越さない。程なくコンクリート舗装が途切れ、沢を渡る木橋から先、広がって歩くような道幅ではない。
 先頭より長坂、当麻、高千穂、しんがりが理絵子。
 人の声が無くなったせいか、砂利と落ち葉を食む靴の音が妙に大きく響く。
 立て看板。コースの案内。城址をぐるり回る歩道と、天守閣跡へ上がって行く階段の位置。下の方に城の経緯。北条氏が武田氏が。
 そして怪談の所以、殲滅戦を目指して女子供も皆殺し。付近の水場が数日血に染まった。
「エグいな」
 当麻の感想。
「というのを、遊び半分に扱っているのが当の肝試し連中ってこと」
 長坂がコメントした直後、風がさーっと吹き渡り、周囲に人影が無いこともあって、“何か”を意識させる事態になったのだが。
「単なる偶然」
「はいはい行きますよ」
 理絵子と高千穂が促したその時、どさっと上から落ちてきたロープ。
 否。
「へびっ!」
「!!」
 当麻が指さし叫び、長坂が悲鳴を上げ、そのまま猛ダッシュ。
「ちょ、お……」
 当麻が腕を伸ばすが、バネで弾かれたように走り出した長坂は数メートル先。
「知!」

(つづく)

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