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【理絵子の夜話】城下 -15-

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 ならば、気狂い石が、回転することで電磁波をぶっ放す……丸く削られた磁鉄鉱の塊、であれば説明が付く。
「気狂い石に落ちてくる水を止めることは出来ないのですか?」
「それは……」
「出来るんですね」
「へぇ」
 が、やりたくない。そのわけは。
「ほでを止めだら余所もんが入って来でまう。それに……」
「それに」
 理絵子の文字通り詰問に男性は観念したようだ。
「墓なんでさ」
「墓……」
 要するに人身御供は薬で眠らせて犬神の郷まで持ち込むが、気が付いてしまったり、要は言うこと聞かない者はそこへ歩かせて“発狂”させて死に追いやった。
「では水を止め、石を止めて下さい。犬神の郷では最早人身御供など必要ありません。そのようにわたくしが取り計らいました。そして彼女を返して下さい」
「へぇ……」
 不承不承、の意思表示であろう、男性は口をへの字にして、しかし承諾した。
「ほだが(ところで)、おなごはどうすだ?……その、おでらがそうやっとってあれだが、明日まで起ぎねで」
 そんなヒマはない。理絵子は示唆を受ける。
 出ろ。早急にここから出ろ。
 自分たちの役目は終わった。
「当麻。出番だ。知持ってけ」
 果たして理絵子は振り返りもせず彼に命じた。
「え?あ、おう」
「急げ。彼女に気付かれたら逆に良くない気がする」
 当麻がバタバタ上がり込む。ただ示唆の言うには急ぐ理由は彼女にあらず。むしろそれを口実にしろと言う。
 さて当麻は彼女を“お姫様抱っこ”しようとしたのであるが。肩と腰に腕を通してどっこいしょ。しかし。
「……えーと」
「40キロのニョタイをマンガのように抱っこできるわけねーだろ。フォークリフトが何で2トンもあるか考えてみな」
 理絵子は腕組みして指摘した。
 男衆におんぶ紐を用意してもらう。彼女の身体をゴロゴロ転がして手足を通し、彼に負ぶわせて前ヒモを締める。
「せーの」
 前から腕を引っ張りの、背後から押し上げの。
 彼はフラフラと立ち上がり、しかし程なくスイッチ入ったように雄々しく赤土を踏みしめた。

(つづく)

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