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【理絵子の夜話】城下 -17-

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 蛇は身体を伸ばすが降りて逃げようという素振りはない。それは「一緒に早く行こう」なら納得の所作。
 理絵子は気付いた。
 急げという示唆の正体。
 守り神がここを離れようとする意味。
「当麻、可能な限り早足で行け。ここは危ない」
「判った」
 わずかに残った水をパシャパシャ歩いて反対側へ渡る。そこは細く、わずかでもバランスを崩したら落ちそうだ。理絵子と登与は前後に別れて当麻を引いて押した。
 左方崖下に件の石が黒光りしている。その周りにはおびただしい数の動物の骨。拠らず生き物近づけば同様に神経系狂わされて死んだのであろう。犬っぽいもの、人間、人間を小型にしたようなものは猿か。
 トンネルへ入る。
 3人は一瞬、足を止めた。何事もなく行き過ぎるなど不可能。なぜならトンネルの両壁にはおびただしい数の棺が並べられている。
“墓所”さもありなん。ただ、木製で水のそばなので殆どが朽ちており、一部お骨が見え隠れしている。
「当麻、怖いか」
「そんな余裕ねぇ」
「上等だ」
 理絵子は、応じ、知る。
 地震が来る。
 地鳴り。およびわずかな震動。肩口の蛇が再び身を伸ばす所作。
「地震が来る。走るぞ」
「おう」
「判った」
 理絵子は当麻の手を引き、登与が背中を押す。
 ゴゴゴゴ……月並みな書き方であるが、轟音を伴う震動が発生し、3人を下から突き上げる。土煙が舞い上がり、視界が徐々に塞がれて行く。
 でも、理絵子には全部映像として認識できている。超視覚。透視能力に近いのかも知れぬ。
 上下に揺れながら、着いた足を下から突き上げられながら、3人は走る。理絵子は己の“見える”がままに彼達を導く。岩をうがち、敷き詰められた砂利を鳴らして……それは湿度がもたらす泥濘を抑えるが目的であろう、古き隧道をつんのめりつつ走って行く。
 一瞬の躊躇も許されない。一瞬速度を緩めて振り返ることすら許されない。伊弉諾尊のようにギリシャ神話のオルフェウスのように。
 応じて走ったつもり、だが。
 ドーン。落雷のそれににた大きな崩落の音がし、同時に3人は突き上げられて次の瞬間、つんのめって相次ぎ倒れる。

(つづく)

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