【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -01-
1
学年にひとりやふたり、占い好きの娘がいるものだ。
なまじ当たったりすると、評判が付いてチヤホヤされるようになり、取り巻きが付いて一定の地位を得たりする。すると次第に評判を気にするようになり、それが生きがいに変わる。そんな、正に絶頂期とでも言うべきタイミングで、転入生に、その“地位”をあっさり奪われた日にゃ、不機嫌にもなるだろう。
ひょんなことで、魔法が大好きという級友に、ルーン文字を使った占いをして見せる展開となり、その結果“魂が救われた”と級友が吹聴したことで、一気に評判になり、相対的に件の娘の人気が落ちた、という時系列になる。おかげで休み時間は先に手洗いに行かないと捕まるし、戻ってくると待ってる。彼女にその娘の悪口を言って寄越す依頼者までいる。
が、4時間目の始まる前、教室の後ろドアから入ると、級友達の心配そうな目。
いつもと違う“お客様”が来ていることはすぐに判った。
流麗な長い髪の持ち主。お嬢様タイプ。彼女を見つけるや、
「相原姫子(あいはらひめこ)さん」
椅子に足を組んで座っており、腕組みしてこちらを見ている。紺色ブレザー制服のスカートを長いまま着用しているが、足が長いせいか似合って見える。挨拶されたら答えましょう、
「神領美姫(じんりょうみき)さん」
彼女は立ち止まり、返した。神領美姫の眉根がぴくりと動く。間髪を入れずフルネームで返されて少し驚いた、そんな感じか。
「占いのご用命で?」
「私を占ってもらっていい?」
この手のさや当て、日本語でなんと言ったか、ああ、験比べ(げんくらべ)か。まぁ挑戦状の類いであろう。承るのは構わないが、こちとら先約がある。
「次は2組の武並(たけなみ)さんで、その次が釜戸(かまと)さんだと思ってましたが」
少し冷たい目で指摘する。その二人は少し離れて彼女を見ている。
「譲ってもらいました」
「ホントに?」
彼女は二人の方を見て尋ねた。
「う、うん」
おどおどした感じの回答。
二人が元々、神領美姫に頼んでいたが、自分に“鞍替え”したのは、火を見るより明らかだった。元の主人に見咎められた裏切り者……選択肢はあるまい。
「判りました。時間が無いから急ぎますね」
“姫ちゃんの占いコーナー”は、彼女の椅子と机を使い、一つ前に座っている別の娘の椅子を借り、前後逆にして座ってもらう形で行う。が、神領美姫が座っているのは彼女の机、つまり本来彼女が座る側。
彼女は構わず、“お客様”の席に座る。
最近のコメント