« 2024年3月 | トップページ | 2024年5月 »

2024年4月

【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -01-

←レムリアのお話一覧次へ→


 学年にひとりやふたり、占い好きの娘がいるものだ。
 なまじ当たったりすると、評判が付いてチヤホヤされるようになり、取り巻きが付いて一定の地位を得たりする。すると次第に評判を気にするようになり、それが生きがいに変わる。そんな、正に絶頂期とでも言うべきタイミングで、転入生に、その“地位”をあっさり奪われた日にゃ、不機嫌にもなるだろう。
 ひょんなことで、魔法が大好きという級友に、ルーン文字を使った占いをして見せる展開となり、その結果“魂が救われた”と級友が吹聴したことで、一気に評判になり、相対的に件の娘の人気が落ちた、という時系列になる。おかげで休み時間は先に手洗いに行かないと捕まるし、戻ってくると待ってる。彼女にその娘の悪口を言って寄越す依頼者までいる。
 が、4時間目の始まる前、教室の後ろドアから入ると、級友達の心配そうな目。
 いつもと違う“お客様”が来ていることはすぐに判った。
 流麗な長い髪の持ち主。お嬢様タイプ。彼女を見つけるや、
「相原姫子(あいはらひめこ)さん」
 椅子に足を組んで座っており、腕組みしてこちらを見ている。紺色ブレザー制服のスカートを長いまま着用しているが、足が長いせいか似合って見える。挨拶されたら答えましょう、
「神領美姫(じんりょうみき)さん」
 彼女は立ち止まり、返した。神領美姫の眉根がぴくりと動く。間髪を入れずフルネームで返されて少し驚いた、そんな感じか。
「占いのご用命で?」
「私を占ってもらっていい?」
 この手のさや当て、日本語でなんと言ったか、ああ、験比べ(げんくらべ)か。まぁ挑戦状の類いであろう。承るのは構わないが、こちとら先約がある。
「次は2組の武並(たけなみ)さんで、その次が釜戸(かまと)さんだと思ってましたが」
 少し冷たい目で指摘する。その二人は少し離れて彼女を見ている。
「譲ってもらいました」
「ホントに?」
 彼女は二人の方を見て尋ねた。
「う、うん」
 おどおどした感じの回答。
 二人が元々、神領美姫に頼んでいたが、自分に“鞍替え”したのは、火を見るより明らかだった。元の主人に見咎められた裏切り者……選択肢はあるまい。
「判りました。時間が無いから急ぎますね」
“姫ちゃんの占いコーナー”は、彼女の椅子と机を使い、一つ前に座っている別の娘の椅子を借り、前後逆にして座ってもらう形で行う。が、神領美姫が座っているのは彼女の机、つまり本来彼女が座る側。
 彼女は構わず、“お客様”の席に座る。

(つづく)

| | コメント (0)

2024年4月以降のうごきぶり

4月17日開始で隔週でレムリア

・魔法少女レムリアシリーズ「アルカナの娘」

それから「過去にこんな事件がありまして」と作中で書いていながらココログに移植するのを忘れていた理絵子の長い話。

・理絵子の夜話シリーズ「空き教室の理由」

こちらは5月4日開始で毎週更新。単純計算で1年半かかります。

引き続きダラダラと。 

| | コメント (0)

【理絵子の夜話】城下 -19・終-

←前へ理絵子の夜話一覧へ→

「面倒が無くていい」
「今のうちに」
 おんぶ紐をほどき、長坂知を横たえ、3人で力を合わせて取り除ける岩などどけると。
 壁。明らかに人工の。
「コンクリ?」
「みたいだね」
 触るとジメジメして柔らかい感じ。試しに石でガツンと殴ると容易に削れた。
「“アルカトラズからの脱出”って映画を思い出したよ」
 登与が言った。著名な脱獄映画で、劣化して粘土のようになったコンクリートを少しずつ削って穴を掘る。
 それだ。理絵子は回答を見いだしたと直感した。
「当麻。このコンクリは劣化してる。力任せにぶち破れ」
「判った!」
 石器人よろしく岩で殴り、削って薄くなり、ヒビが入ったところを蹴る。
 穴が開き、目を射る外光。
 刹那あり、隧道内から転げ出た岩塊が路面に落ちる。多湿な空間にあったせいか脆くなっていたようで、跳ねるのではなく潰れてしまい、砂を思わせる鈍く響きの少ない音がした。が、その音の伝搬の仕方から大きな空間に繋がったと判じる。
 蹴り広げてスマートホンのライトで照らす。道路トンネルの中に出たと考えれば合点が行く。穴開いた位置は、トンネル路面上からは胸の高さくらいであろうか。先に当麻に降りてもらい、長坂知をどうやって下ろそうかと思案している途中で彼女は目を覚ました。スマホ内蔵の歩数計と方角から、相次ぐ土砂災害で遂に遺棄された旧街道のトンネル内と判断する。
「旧街道の入口って埋まってるんじゃ?」
「キノコ栽培に使ってたはず」
 4人は、一匹を伴い、全身赤土にまみれつつ生還した。

「行基道の再発見と甌穴(おうけつ)中の球形磁鉄鉱石回転による電磁波発振現象」

 この探検行は地元郷土史研究家の目にとまり、市内レベルではあるが論文書いて発表するに至るおおごとに発展した。
「……このように、超能力という言葉を軽々に持ち出すことは避けるべきではありますが、いわゆる霊感が電磁波過敏症を意味するものであれば、この回転する磁鉄鉱で生成された電磁波に導かれて霊的な道場として開発が行われ、山頂寺院に伝わる行基による開山の背景までも同時に説明することが出来るほか、戦国時代に悲惨な殲滅戦が行われたとされながら多くの子女が逃げ延びたと考えられること、赤く染まったのは血ではなく、その際関東ロームの赤土を大量に流し込んだと考えれば説明できるなど、仮説や噂の類いに論拠を与えます。残念ながら姿を見せたのはわずかで、今般の地震により再び土中に没しましたが、幸いにもトンネル内に場所を比定出来ていますので、今後の本格的な調査発掘に後を託したいと思います。ありがとうございました」

城下・終

→理絵子の夜話一覧
→トップへ戻る

| | コメント (0)

« 2024年3月 | トップページ | 2024年5月 »