【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -02-
「何を調べますか?」
机の上で両手指を組み合わせ、神領美姫に尋ねる。自分を睥睨するその姿は、透明感に凄みをまとい、まるで音楽CDのジャケット写真のようだ。フィアンセはこういうビジュアル引力を”観賞用美女”と表現する。蠱惑的な笑みでも浮かべれば、占い師としてミステリアスなイメージ増幅に大いに寄与したことだろう。その瞳に映る童顔ショートカットな自分は、まるで場違いな新入生のようだ。
すると。
「そのルーンの石はどこにあるの?」
性急な感じで訊いてくる。彼女の“ルーン占い”は、願いや知りたいことに対し、手品の手法でルーン文字の刻まれた水晶を取り出すというもの。文字に込められた意味や伝承が占いの答え。
「お願いに応じた内容で1つだけ出てきますよ」
「だからどこにあるの?」
苛立つ声音。机の中を見た結果の質問であることは確かめるまでもない。
そこにルーンは無いからだ。勝手に机の中を見るとか失礼なことは置いといて。
「それは企業秘密ですよアルカナのお嬢さん」
彼女は唇の端を持ち上げ、ちょいと不気味な笑みを作って言うと、組み合わせた両手を開いた。
タロットカード大アルカナ22枚を扇のように広げる。
何もなかった手からタロット。手品である。衆目から小さな歓声、および、
気付いて驚愕に大きく体をびくりと動かしたのは神領美姫。
「あたしの!いつの間に!」
立ち上がらんばかりの勢い。
「一枚、お引きなさい」
比して彼女は髪の毛の一本も揺らすでなく、テーブルに22枚を伏せて直線状に並べた。
「私は願いや思いを叶えたい人のために文字に尋ねる。だけどあなたはその意図はない。単に今を知りたいならタロットがふさわしい。違いますか?」
と、神領美姫の瞳から高慢ちきの光が消えた。
「そうだけど……」
戸惑いの口調は、主導権を取られたが、否定出来ないので、どう対応していいのか困っている事を証する。要するに”これはヤバい”。
「傷や汚れでカードが判ってしまうと言うなら、ダイスに聞いてみますか?シャッフルするから止めてもらってもいいけど」
神領美姫の眉根がピクリと動くが見なかったことにし、カードを集めてトランプのように切る。とはいえこの娘に“勇気”がないのは明白だ。
怖いのである。なにがしか、予感があるのだろう。自身が占いをするが故に。
「私が引けばいいですか?」
答えはない。ないと判っている。否定も肯定もしない。少し投げやりなのかも知れない。
彼女は適当にシャッフルの手を止め、一番上の一枚を机の上に音もなく置いた。
“女教皇”のリバース……すなわち逆さま。
(「女教皇」wiki)
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