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【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -03-

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 神領美姫の瞳孔が一度大きく開いてから、元通り閉じたのを見逃さない。要するに“図星”だ。そして“落ち着け”と自らに言い聞かせた。
「私に敵意を?」
 上目で訊くと、
「うるさい!」
「脊髄反射しちゃダメじゃん……おっと」
 4時間目が始まるチャイム。悔しそうな神領美姫。恥を掻いた、という認識なのだろう。
 だがそれはある程度見えていた展開。および、そこを責め立てるつもりはない。
「ルーンに尋ねる前に、ちょっとお話をした方がいいような気がします。放課後、任意のタイミングで私を訪ねて下さい。その時誰にも邪魔されず話が出来るように取り計らってもらえるでしょう」
 それこそ占い師のように。女教皇の上下を戻して正位置とし、21枚のカードに混ぜて神領美姫の手に持たせる。女教皇正位置の意味の一つは“意外なタイミング”。つまり、今、彼女が言った“取り計らい”の内容そのもの。
 神領美姫は意味を判じたか、彼女を見つめた。
「カードの汚れ、取っておいたから。早く教室戻りな」
「え?あ、うん……」
 素直に応じて、しかし力なく、神領美姫は席を立った。
 先ほどまでの勢いが、しおれてしまった花のよう。

 お高くとまっていたタロット女を3分でシオシオにさせた話は、給食が終わる頃には学年中に広がっていた。“ぎゃふんと言わせた”という表現はこういうときに使うのだと教えてもらった。
「会うんだって?そのままフェードアウトさせればいいのに」
 顔に反対と書いてある大柄な娘は大桑(おおくわ)という。彼女が転入してその日のうちにいがみ合ったが、今は仲良しだ。柔道部、最後の夏の大会は大将を務める。
「ってことは、何か言われた……?」
 やれやれと思いつつ訊いてみると。
「ウチの部員でアレに占ってもらったのがいて、自信喪失、敗退、退部」
「真に受けたと。私が言うのもアレだけど」
「姫のはちゃうじゃん。刺さること言うけど元気をもらえる。あっちの姫はディスるだけ」
 ディスる。英語の否定辞disから来た“腐す”を意味するネットスラング。2010年代。
「否定的な内容ばかり当たる?」
 すると二人の会話を聞いていた数名がハッとした顔でうんうんと頷いた。
「それだよ、姫ちゃんご明察」

(つづく)

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