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【理絵子の夜話】空き教室の理由 -006-

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 再び砂利の上を走る音が近づき、車掌が列車の後方へと戻って行く。
 プアン、と電車が軽く警笛を鳴らした。
 放送機器をいじるノイズ。
『安全が確認されました。発車します』
 電車が動き出す。スローで暫く走り、目覚めたように加速する。
『お待たせしました。電車は2分ほど停車致しました。次は……』
 何事もなかったかのように電車は走る。一つ、二つと駅を過ぎるに従い、担任の身体からこわばりが取れて行く。
 1分遅れとかで下車駅。
 ホームに降り立つ。川沿いの高架駅であり、1本ホームを挟む形で両側に上下線の電車が止まる構造。だが、その1本だけのホームを秋風がびょうびょうと吹き抜けるという様が、秋特有というか、やがて訪れる冬をも思わせる寂しげな気配。
 少し胴震いが出る。理絵子はあわててカバンからカーディガンを出して羽織った。夏冬の制服の切り替えは10月中に各自の判断でというアバウトな形だが、日中は夏で朝夕は冬でというのが実際のところであろうか。
 待ってくれた担任に頭を下げて改札へ抜ける階段を下りる。通路を折れ、一旦担任から離れ、改札にカードをかざす。
 ピピッ。通過。
 しかし。
「……!」
 チャイムが鳴り響き、隣改札で担任がフラッパゲートに行く手を塞がれる。続いていた人の波が文句言いたげな顔で担任を見、別の通路へ回る。
 担任は再度改札にICカードの定期をかざしたが、やはり拒否された。
 理絵子は有人改札に行く旨担任に示した。
 係員に定期を渡す。係員はパソコンに繋がれた機械に定期を通し。
「入場記録がありません。どちらから?」
 明らかに不正を疑っている目。
「あのう、私と一緒なんですが」
 理絵子は口出しした。
「あんた、娘さんかい?」
「いえ、この方のクラスの生徒です」
「証明するものは?」
 理絵子は中学の学生証を出し、担任にも身分証明を出す旨促した。
 係員が2枚のIDを見比べる。

(つづく)

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