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【理絵子の夜話】空き教室の理由 -011-

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 ちゃぶ台に流れ落ちる滴の量が今ひとたび増加する。
 自分を責める。心理状態としては“鬱”に近いのだろう。
 こういう心理構造の遠因は生い立ちに求められる。「早くやれ、もっとやれ」とド突き回されていたゆえに、一緒に……とか、協力を得て……という経験がなく、全て自分のせいなのだ。
 結果、失敗は敗北して傷つくのみであり、それを教訓としてココロの糧……にならない。前後ひっくり返して失敗を恐れるようになり、自信が持てない。
「そんなことないですよ」
 理絵子は明るく言った。
「本当に嫌われているなら無視されます。でもそんなことはありません。逆にみんなから好かれるのも変。先生の思い過ごしですよ」
 ようやく、担任は顔を上げた。
「ありがとう、ごめんね」
 まず言い、そして一呼吸置いて。
「私、生徒を死なせたことがあるの」

 ここで少々時間を遡る。
 理絵子がその中学校に伝わる“怪談”を初めて耳にしたのは、入学して間もない頃である。
 彼女たちの学校校舎は中央に時計台を配し、東西方向に伸びているのだが、その東側だけ4階建て、西側は3階建てになっている。そして、東側4階部分は階段にロープが張られ、立ち入り禁止。
 その理由は。
「そこに入ると死ぬんだってよ。だからだって。カメラで監視していて、入ろうとするとメチャクチャ怒られる」
 曰く、理絵子達が生まれるより以前、昭和の時代に、女の子が自殺を図り、下って後追いが出たらしい。
 そこは“第2音楽室・第2理科室・多目的教室”が配置されていたが、少子化で次第に使われなくなった。
 その結果、無人境となり、高層階ということも手伝って自殺を誘発しやすい環境が整った…理性的な解釈をすればそうなろう。しかし、伝説によれば、自殺に至った悲劇はひとつで、後の例は伝説に興味を持って部屋に入った挙げ句、“幽霊”に誘われて同情し、同様に死を選んだり、幽霊によって精神的に変調を来し、そのまま飛び降りたものであるという。

(つづく)

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