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【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -10-

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「敵と感じれば攻めもするでしょ。私はあなたが悪いと思っているその過去を責めたりはしません。現に私がムカついてしょうがないって子は幾らもいます。でも、仕方ないしそれで当然だから、嫌いにならないで、とは言わない。ただ、喧嘩売ってくるなら言うことは言う。あなたの挑戦にもそうしたつもり。でも、その結果あなたは打ちのめされたように見えた。あるべきあなたの姿じゃないように思えた。だから、話を聞いてみようと思った」
 彼女は抱きしめた耳元で一気に喋り、身体を離した。
 もう、涙は必要ないという確信と共に。
 テーブルに戻ってタロットに尋ねる。シャッフルして裏返し、一番上。
“魔術師”。

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(Wiki)
 美姫の眉根が歪んだ。
「皮肉みたい」
「そこは素直にとっていいと思うよ。信じて、動け。そして多分、あなたにテレパシーのような輝きは戻らないかも知れないけれど、傷ついた心の状態は覚えているはず。ここでようやく私のルーンの出番です。児童館で手品イベントやる時は魔女のレムリアって名乗っててね。その流儀で」
 以下姫子を彼女の意を汲みレムリアと記す。レムリアは右の手指をパチンと鳴らし、握りこぶしを作ってテーブルの上に置いた。
「触れて。今のあなたにふさわしい一文字があるはず」
 美姫は手のひらで包むように触れた。
「姫ちゃんの手、温かい……」
「基礎代謝が旺盛なようで」
 彼女レムリアは応じてから、手のひらを開いた。
 水晶の中に浮かび上がる、アルファベットの“F”の横棒を斜め下に傾けたような文字。

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(Wiki)

「アンスール……だっけ」
「そう。正位置なので、あなたの知ることをよりよい方向に使いなさい」
「私の知ること……」
「辛さや葛藤、迷い、破滅、そして裏切り……」
“裏切り”……その言葉に美姫は肩をびくりと震わせ、膝の上で拳を固く握った。
 友の信頼を裏切って辛い思いをさせたのは自分だし、そして、相原姫子の出現によって“信者”に裏切られたのもまた自分。

(つづく)

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