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【理絵子の夜話】空き教室の理由 -015-

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 理絵子は担任の言いたいことを酌み取ったつもりでそう答え、言い終わってから違和感を覚えた。
 それだけだとしたら薄っぺらいのだ。何か本質とずれているのではないか?
 と、台所で、ガラス物質が割れるがしゃんと大きな音。
「わ!」
 担任が身体をびくりと震わせ、手にしていたコーヒーをこぼしてしまう。
 見るとガラスのコーヒーポットが割れている。
 理絵子は超常の視覚で室内を見渡す。今、特にそちら方面の力は感じなかった。
 では偶然なのか?
 偶然という判断に激しく異を唱えるものが心理の裡に存在している。ここに来るまでの電車の急停止、ICカードのトラブル……
 蓋然性は?
 よく判らない。たった今の理絵子の気持ちはそうなる。心霊写真と担任の過去の過ち、つながりはあるのだと思う。ただ、だとすればそれは今でも引きずっていることを示し、解決には至っていない。担任の告白だけでない、“突っ込みが浅い”部分が存在する。
「辛いことをお話しさせてしまいましたね」
 畳の掃除とポットの処理が済んでから、理絵子は言った。
「ううん。でも……あなたに言ったらちょっとすっきりした」
 担任は小さく笑みを見せた。怯え縮こまっていた姿はなく、“生徒に対する教員”としての余裕……若干の横柄さが見えている。理絵子自身は謎を大量に頂戴したわけだが、担任がそう言うなら、今日のところはそれで良いのだろう。担任自身についてはこの状態で置いておいてよい。ただ、真相にはほど遠いと見られるので、そこは自分が動いてもう少し調べてみたい。ちなみに、首を突っ込むことに対する自制の感覚は今はない。

(つづく)

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