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【理絵子の夜話】空き教室の理由 -018-

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 湯気立つマグカップにティーバッグを放り込み、ケーキを持って2階の自室へ。
 ドアを開いて明かりを点ける。“すっきり”という印象を誰もが持つ6畳洋室。理由として、理絵子はあまり“女の子っぽい”コレクションは持たない。本棚にマンガとノベルズはずらりとあるが、ぬいぐるみやアクセサリーの類は皆無といって良い。色遣いも木目調の方が落ち着く。
『あなたはやはり普通の子と相当違うようね』
 担任の台詞を思い出して苦笑する。えーえーどうせ私は。
『“しずかちゃん”より“出来杉くん”のようだ』
 自分に対する友人の評を思い出す。著名なマンガの登場人物であるが、同じ優等生でも“男の子”の方に近いとその友人は評したわけだ。
 だとすれば恋愛経験がないことと一致が見いだせるが。
 まさか。
 姿見の自分の身体を思わず見てしまう。りぼんで緩く縛った長い髪、頭のてっぺんから足の先。自分で言うのも変だが“女の子”の外見を備えているとは思う。ちなみに彼女は学級委員で美少女であって、男子からの勇気を振り絞った手紙はよく来る。が、内面のとりわけ“女性性”に対して言及したものはまず無く、容姿と成績、優しい感じに好感が持てますと要約できる物が殆どだ。自分の捉え方についても、相手自身の気持ちの推論に関しても、“会ってみたい、話を聞いてみたい”と思うような物はこれまで無い。端的に言ってしまうと内容が幼いのである。同年代の男子というより“男の子”を相手にしているような感覚にとらわれ、マンガやノベルズの展開と異にする。言っちゃ悪いが要するに物足りない。
 ああそういうことか。理絵子は自分の思考展開に“恋愛”しない結論を見た。どうやら自分はもう少し年上というか、人格的に成熟した男性を求めているのかも知れぬ。
 だとすれば父親のせいだ。職業上、幼い暴走を日常見ていた父が我が子に対しどんな育て方をしたか、容易に想像が付く。

(つづく)

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