【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -09-
「うん。背後霊みたいなのが見捨てて出ていった、みたいな感じになって、ポカンと空っぽになった。あ、外国にいたんだっけ、背後霊ってのは……」
「判るよ。憑き物さんのことでしょ。悪魔ケダモノから天使であることも。……その存在は感じてた?」
「ううん……全部自分の力だと思って……え!もしかしてそのせい?私が背後霊さんに感謝しなかったから……」
「未練があるの?力の存在に」
話を逸らすと、神領美姫は目線を外して少し考えた。
「良いことも、残念に思うことも……でも、余計なことを判ってしまわずに済むようになったのは、楽、かな」
神領美姫は笑った。少し寂しげではあるが。
「じゃ、良かったんじゃない?でも、それでも占いは続けたんだよね」
神領美姫は俯いた。
「うん。だってそれ取ったら何も残らないじゃん、って思って。そう、私って占い以外の人付き合いないって……」
神領美姫はハッと気付いたように早口で言い、その目に涙を浮かべた。彼女は立ち上がり、美姫の傍に膝立ちとなり、肩を抱いた。
「悲しいこと言わせてごめん」
「ううん構わない。相原さん聞いてくれてるからいい……」
我慢して、溜め込んでいたのだろう。神領美姫は堰が切れたように泣き出した。
わんわんと幼子のように大声で泣いてしまう。階下母親が心配してショートメッセージを送ってくるほど。
『大丈夫なの?』
『辛いこと話してくれたの』
神領美姫はひとしきり涙を流し、ハンカチで拭った。
「後はもう、判り切ったことを言うか、どっちにも取れることしか言わなくなった。だめ、って言っちゃえば、諦めるから、絶対にだめになるしね。酷いよね私……」
「気付いた人は、悪く言うようになるね」
「そんな時、相原さんが転入して来た。すごい美少女で魔法のような手品を見せて……地震の時は気がつくと被災地で救助活動していた。学年中の噂になった。そしたら占いも凄いって……もう、私には何も、誰も残らなかった」
神領美姫が言い終わった瞬間に彼女は彼女を目一杯抱きしめた。
「何言ってるの、ここに残ってんじゃん」
今度は涙ボロボロではあるが声押し殺すようにして肩を震わせる。一つ言えるのは、神領美姫の周囲に居たのは、美貌の占い少女という一般評に釣られた者ばかりで、友達になろうという手合いは皆無であった。
神領美姫はそれを何となく感じていたのだろう。テレパシーとは言えないまでも、明確化された事実であれば確信を伴ってそうと判る。なお、美姫の言う“地震”は東北地方太平洋沖地震・東日本大震災を言い、彼女らの学校は同日“お別れ遠足”であったが、姫子は途中から救助ボランティアに参加し、学校へ数日戻らなかった。
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