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【理絵子の夜話】空き教室の理由 -017-

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 結果として、塾に行かず音信不通の娘に対して、帰宅時の親の反応は当然こうなる。
 玄関マットに仁王立ち、腕組みしてギロリ。
「ただいま」
「……理絵子。ああ、もう、どこへ」
「ごめん、先生のとこ行ってた」
“トホホ”と書いてある安堵した母の顔に、理絵子はまず言った。
 母親の表情に小さな笑みが浮かぶ。ちなみに、こうした背景もあり、発信先を制限したGPS付きの機種のみ許可しようという動きもPTAの間にはあるという。
「そう……。まぁいいわ。ご飯食べなさい」
「はい」
 母親がスリッパをスタスタ言わせて廊下の奥へと歩いて行く。
 理絵子はまず2階へ上がり、着替えを済ませてリビングダイニングへ。
「あれ?お父さん今日……」
「夕方に出て行った」
「訊きたいことあったのに……」
 理絵子はリビングのテレビ桟敷に配された、父親の指定席である大振りなソファに目をやり、ダイニングテーブルの自席に座った。父親は警察官。ドラマでよくある“捜査1課”ではなく、組織犯罪などを扱う職場だが、忙しいことには変わりはない。
 以前は少年犯罪などを担当していたそうである。理絵子の就学に伴い、現職場に異動した。
 食事を摂る。同じテーブルはす向かいで母親がノートパソコンをカチャカチャやっている。最近始めた内職で、ウェブサイトのデザイン。自分の高校進学に備えての学費稼ぎと判っているので、月謝払っている塾をサボるのは少々、胸が痛い。授業の振り替えを依頼しようか。
「先生の所は補習?」
 母親が突然訊いた。
「うん」
 大嘘。
「そう……じゃぁ、テスト期待できるのかしら?」
 そういう話題は願い下げ。
「ごちそうさま~」
「冷蔵庫にケーキ入ってるよ」
 そういう話は別。
「いただきま~す」

(つづく)

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