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【理絵子の夜話】空き教室の理由 -019-

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「ふぅ」
 ため息のひとつも出ようという物である。自己完結を見たところでティーバッグを引き上げてケーキ皿の脇に移動、勉強机に座る。机の上には葉書と封書。母親が置いていった物だ。友人の多くが自室に親が入るのを嫌うが、理絵子としては別に秘密も隠す物も無し、気にしたことはない。むしろ親は味方にしておいた方が後々絶対に良いと思う。
 親なしで生きていける状態ではないからだ。
 その結論に囁く声がある。……その辺が、合理的な考え方が“男の子っぽい”んじゃないの?
「……しょぼーん」
 脱力してひとりごちたところで後回し。ケーキを口にし、机の傍らの携帯電話を取る。理絵子も持っていないわけではない。学校へ持って行かないだけ。画面に触ってスタンバイから復帰、パスワードで通知がワラワラ。
 SNSのメッセージ6通、5通は部活である文芸部の仲間から。文化祭上がってのねぎらいである。1通は級友である桜井優子(さくらいゆうこ)。彼女は級友だが年齢はひとつ上。“2度目の2年生”である。行動や交友関係に対しPTAが眉をひそめる存在であり、ゆえに疎外されがちだが、理絵子は逆に彼女と親しくしている。そんな理絵子に桜井優子は最初とまどっていたが、今では心を開いてくれた。メールは合唱サボってごめんの由。まぁ、徹底的に学校のやることなすことに反する彼女である。いかにも学校的内容の合唱では……というところであろう。ちなみに、彼女はサボった挙げ句“友人”達が所属する珍走団“たこぶえ”の連中と共に、三浦半島の先端へ走りに行ったという。マグロのカマ料理の画像付き。
 返信する。内容は別に濃い物ではない。

(つづく)

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