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【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -11-

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「辛い言い方をしたかも知れない。でも、占いに頼るほど追い込まれた心の有様(ありよう)とあるべき姿をあなたは知っている」
 レムリアはアンスールを美姫の手のひらに載せ、握らせ、そしてもう一度開かせた。
 紐が通ってペンダントの出来上がり。それも手品。美姫はしかし、驚くと言うより“当たり前の結果”を受け入れている表情。
「あたしひとりで占い希望者背負い込んだら忙しくてトイレにも行けない。あなたには占いを引退しないで欲しい。私じゃ嫌だという人も必ずいるし。彷徨う心の受け皿は幾らあってもいい。大アルカナの回答に良い言い回しが思いつかなかったら、小アルカナを引きなさい。そこに答えが啓示される。それはお守りがわりに首にかけて。西方に過去あった魔法国家アルフェラッツの術式Coegi magicae Lunae(こえじ・まじけ・るなえ)に従い」
 レムリアは人差し指を立ててくるくると宙に円を描き、そのままパチンと鳴らした。
 美姫はペンダントを首に通した。
 そこでレムリアは革製のカードケースを手のひらに出して差し出した。
「一式入っています。お持ちなさい。差し上げます。傷だらけのカードでは、めくる前に判ってしまう」
「え?」
 美姫はボタン留めされた蓋を開いた。絵柄は19世紀から20世紀にかけて活躍したデザイナーの手になるもので、ネット辞書で類型の絵柄として取り上げられているほか、現在流通している絵柄の中でも最も一般的なもの。だが。
「羊皮紙……これって」
「ヨーロッパ王侯向けの特注品。ふさわしくない者の元から自ら離れ、ふさわしい者の手元にたどり着くと言います。私があげられる手元のタロットは今はこれだけ。なら、あなたに持てと言うことでしょう」
「でも……」
「値段?希少性?そんなこと気にする人にこれを持つ価値はないと思います。逆に道具とするなら可能な限りよい物を。私の父の教えです。少し裁いてみて」
「え?……あ、うん」
 美姫は78枚を取り出し、シャッフルし、積み上げ、崩して時計回りに混ぜる。
「凄い滑らか……」
 横一列にずらっと並べ、1枚抜き取る。
 羅針盤のような文様“運命の輪”。
「チャンスにせよ」
「私の占いは以上です」

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(wiki)

(つづく)

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