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【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -14-

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〝宣戦布告〟を得てポケットからナイフが現れる。応じて悲鳴がいくつか上がり、りゅーせーからみんな距離を取る。
「龍生……いや……やめて……やめろ……」
 飛び出してくる勢いの美姫を、彼女のクラスメイトらが必死に抑える。姫子はそのうち一人と目を合わせ、頷いておく。
 りゅーせーに目を戻す。ナイフなど別に怖くはない。それ以上にここで怖いのは人質を取られることだが、もっと離れろ、とか自分が言うと逆効果であろう。
 さてこの時、姫子の制服スカートの裾と、そろそろポニーテールにしようかという髪の毛がゆっくり舞い動いている。それは彼女のオーラライトで彼女周囲が熱を帯び、弱い風が生じているせいである。
 そのことに神領美姫が気づく。彼女は多分、自分が纏うオーラライトが見えている。それは彼女の奥底に眠っていた(実態として嫌な記憶を忘れるのと同じ作用で潜在意識レベルに追い込んだ)超常感覚の再覚醒なのであるが、美姫にとってそれは“過去、日常”であったせいか、変化だとは認識していないようだ。であれば逆に構わない。そう、貴女の見立ては正しい。私は魔女のレムリア。だから私は貴女の「誰にも理解されない悩み」が理解できる。
 と、教室の前後から床面を這って侵入してくる黒い点状のもの多数。
「ゴキブリだ!」
「うわっ」
 悲鳴が上がりみんな逃げる。ゴキブリたちはりゅーせーの回りをゴソゴソし、応じてりゅーせーとみんなの距離は広がった。君たちいい仕事だ。
 そこへ、”朝の会”に来たであろう、ドア向こうにキュロットスカートの担任奈良井が姿を見せ、目を見開く。姫子は手のひらで“待って”のジェスチャー。
「ダンナが言ったよ。男の子が女の子をいじめるのは弱いからだってな。もっと弱いのを叩いて強いつもりになるんだってよ」
 姫子は言いながらりゅーせーを睨み付け、ゆっくり歩き出す。挑発である。攻撃を全て自分に振り向けるためである。
 この場で”レムリアの術”を使った対処は可能である。だが、こいつの場合思い知らせないといつか同じ事を繰り返す。

(つづく)

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