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【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -15-

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「ほれ、身長150センチの女の子が丸腰だぜ。学校一の褐色美少女傷だらけにしてみろ。永遠の卑怯者として伝説になれるぜ」
 そこで大きく息を吸って。
 一拍。
「やれるもんならやってみろ!夕方のアサガオみてえなチンポコ野郎が!」
 小柄がウソのような大音声は教室の窓ガラスをビリビリ言わせ、その場の誰もが度肝を抜かれた。
 否、過去に同じ声を聞いた男子生徒平沢と、“そうなると寸前に探知した”美姫を除いて。
 彼女は放たれた弾丸のように突進した。
 突如頭突きの勢いで突っ込んできた小柄な娘にりゅーせーは反射的、と表現できる動作で小刀を突き出した。
「死ねーっ!」
 多くの悲鳴。刹那。
 それは闇雲ではあったが、そのまま彼女が突進すれば、何らかの傷を付けるであろう突き方であった。しかし、彼女には、どこへ、どのタイミングで刃先が達するか、判っているのであった。
 わずかに首を傾げて、右手を立てる。
「チェックメイトだ」
 それは、日曜日に放送している女児向けのアニメ。女子中学生が変身して華麗なコスチュームで悪と戦い、やっつけた時の決め台詞。
 衆目が惨劇を予見して逸らした目を恐る恐る戻すと、彼女姫子は、真剣白羽取りの要領で、小刀の刃先を右手の人差し指と中指でつまんでいた。“ピース”のポーズで、刃先を挟んだ形だ。
 りゅーせーは刃先突き出した勢いを往なされバランスを崩し、片足立ちの状態。逆に言うと伸びきった腕を彼女の指先で支えられている。
 彼女はそのまま小刀を引き抜いた。
 支え失えば倒れるのみ。
「あっ!」
 ドタバタと机に胸を打ち、更に床面に崩れ落ちる。ゴキブリたちのただ中にうつ伏せに倒れ込んだので、応じてゴキブリたちが動き回って周囲に小さなパニックを惹起したが、
 どうでもいい。両クラスの男子が一斉にりゅーせーをとっちめに動き出したので、彼女はナイフを遠くに放り出し、美姫に駆け寄った。なおこの間に“役目は終わり”とばかり、ゴキブリたちは教室から去った。

(次回・最終回)

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