【理絵子の夜話】空き教室の理由 -028-
だから4階音楽室の直下にある屋外通路は、アスファルトが塗り替えられてひび割れがない。
「で、女の子が叱られた理由なんかは……」
何か訊くたびにいろんな話が出る。だが、諸説融合すると大体担任が言っていたことと合致した。
ただ、ひとつ違うというか、新たな事実として判ったのは、その“番長”すなわち校内不良グループの首魁に相当し、相手グループ首魁を半身不随に至らしめた人物が、小学5年生の夏に転入してきた男の子であり、女の子とのおつきあいは、その冬前後にスタートした、というもの。
「それだけ付き合ってりゃなぁ」
リーダーはタバコの煙をぷかりと浮かべた。
理絵子はとりあえず頷いた。
長く付き合った。不良グループの首魁になっても尚。その別れを強制された。
つじつまは合う。だがしかし。
“死を選ぶ動機”……例えるならガラスのコップが砕け散るような、そのカシャンと行ってしまう“破壊エネルギー”としては、やや足りない気がするのだ。繊細で感受性が高い少女の思春期と言ったって、振り返ることもなく死へ向かわせるにはインパクトが不足と思う。
“本人”に会いたい。だが気配はない。
ならば。
「あのー、その女の子の家とかって、判りませんか?」
「え?」
メンバー同士顔を見合わせる。さすがにそこまで知る者はいないか。
すると。
「知ってるが、行ってどうするんだい?」
背後から声が掛かった。
マスターである。
「もう家は壊されて駐車場になってるが……」
理絵子は一瞬返答に困る。行ってみて、何か女の子の思惟の残照でも超常感覚(この場合サイコメトリという名で分類される能力を使う)で拾えれば、なんて説明が出来るわけもなく。
| 固定リンク
「小説」カテゴリの記事
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -031-(2024.11.30)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -030-(2024.11.23)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -029-(2024.11.16)
- 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -16・終-(2024.11.13)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -028-(2024.11.09)
「理絵子のスケッチ」カテゴリの記事
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -031-(2024.11.30)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -030-(2024.11.23)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -029-(2024.11.16)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -028-(2024.11.09)
- 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -027-(2024.11.02)
コメント