« 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -027- | トップページ | 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -16・終- »

【理絵子の夜話】空き教室の理由 -028-

←前へ次へ→

 だから4階音楽室の直下にある屋外通路は、アスファルトが塗り替えられてひび割れがない。
「で、女の子が叱られた理由なんかは……」
 何か訊くたびにいろんな話が出る。だが、諸説融合すると大体担任が言っていたことと合致した。
 ただ、ひとつ違うというか、新たな事実として判ったのは、その“番長”すなわち校内不良グループの首魁に相当し、相手グループ首魁を半身不随に至らしめた人物が、小学5年生の夏に転入してきた男の子であり、女の子とのおつきあいは、その冬前後にスタートした、というもの。
「それだけ付き合ってりゃなぁ」
 リーダーはタバコの煙をぷかりと浮かべた。
 理絵子はとりあえず頷いた。
 長く付き合った。不良グループの首魁になっても尚。その別れを強制された。
 つじつまは合う。だがしかし。
“死を選ぶ動機”……例えるならガラスのコップが砕け散るような、そのカシャンと行ってしまう“破壊エネルギー”としては、やや足りない気がするのだ。繊細で感受性が高い少女の思春期と言ったって、振り返ることもなく死へ向かわせるにはインパクトが不足と思う。
“本人”に会いたい。だが気配はない。
 ならば。
「あのー、その女の子の家とかって、判りませんか?」
「え?」
 メンバー同士顔を見合わせる。さすがにそこまで知る者はいないか。
 すると。
「知ってるが、行ってどうするんだい?」
 背後から声が掛かった。
 マスターである。
「もう家は壊されて駐車場になってるが……」
 理絵子は一瞬返答に困る。行ってみて、何か女の子の思惟の残照でも超常感覚(この場合サイコメトリという名で分類される能力を使う)で拾えれば、なんて説明が出来るわけもなく。

(つづく)

|

« 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -027- | トップページ | 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -16・終- »

小説」カテゴリの記事

理絵子のスケッチ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -027- | トップページ | 【魔法少女レムリアシリーズ】アルカナの娘 -16・終- »