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【理絵子の夜話】空き教室の理由 -029-

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 えーっと、えーっと……。
「そうですか……じゃぁ、変わっちゃったかなぁ。というのはですね。周りが暗いとか、雰囲気が悪いとかが自殺に誘導することもあるとか聞いたので、家から学校まで一度たどってみようかと」
「ああ、あの踏切みたいにか」
 桜井優子が言った。
「踏切?」
 何の関係があるんだ?とばかりに、マスターが眉根をひそめて桜井優子を見る。
「判った。あれだろ、4丁目のカーブの踏切だろ」
 リーダーが一言。またもタバコをぷかり。
 そこが自殺の名所であることは、この町の住人にとっては半ば常識。そばに藪があり、街灯が整備されておらず、人通り少なく、陰惨・陰鬱だった。
「そういうことか」
 マスターが理解したらしく、頷く。
「あそこに照明が付いて歩道橋が出来たのはりえぼーの父ちゃんが動いたからだもんな」
「そうか、あれ付いたのりえちゃんだったのか……」
 マスターはかみしめるように言うと、一旦店の中に戻った。
 出て来た時には両の手にヘルメット。片方はレース用フルフェイス。もう片方は、良く原付でオバチャンが使用している一般的なもの。ハーフヘルメットとか言ったか。
「お前ら勝手にやっててくれ」
 マスターは理絵子にオバチャンヘルメットを手渡した。
 すなわちバイクに乗れ。
「え?マスター行くっすか?」
 たこぶえメンバーから不平を含んだ発言。
「だってお前、そうしなきゃいつ行くんだよ。夜の9時に警察屋サンの中学生の娘呼び出すのか?『今から自殺した娘の家の跡地に行きますんで』って」
 マスターは言うと、庭の片隅、バイクに掛けられたカバーをサッと外した。
「お、伝説のガンマ」

(つづく)

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