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【理絵子の夜話】空き教室の理由 -027-

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「そーそーこないださぁ、マックに行ってバーガー100個っつったら、“こちらでお召し上がりですか”って。んなに店で食うかっての」
 すると。
「それ都市伝説。俺が学生の頃からあった」
 マスターが言った。
「あらバレた」
 特攻服が豪快に笑う。
 理絵子は“都市伝説”に肝心な用事を思い出した。
「そういや皆さん、そこの中学の出身ですよね」
「おう、横須賀(よこすか)とか朝倉(あさくら)とか、まだいるんだってな」
 朝倉は理絵子の担任である。
「4階の教室の話、いつからあるんですか?」
 聞いたら、全員が一瞬で時間を止める魔法を受けたようになり、互いの顔を見合わせた。
「ぼく、こわいおはなし、きーらい」
 マスターがふざけた口調で言い、店の中へ。
 それはつまりマスターも知っているということ。かなり古い話である。
「それなら俺らの時で既にそれこそ都市伝説だわ」
 連中の中では年かさの革ジャン男が言った。
“たこぶえ”リーダー、と理絵子は認識している。
「それはやっぱり、女の子が教師の無理解から自殺した?」
「ああそうだ。でもでっち上げってわけでもないらしい」
「の、ようですね」
「なんか叱り飛ばしてそのショックで、と俺聞いたぞ」
「違うよ。死にたくなければ受験しろって迫ったんだ、って」
「そうじゃねぇ、受験しないなら死ぬようなもんだと言ったら本当に死ぬ方を選んだんだよ」
 理絵子は苦笑した。伝承の過程で少しずつ細部が変わって行き、尾ひれが付いて真実が歪んで行く。典型的な“都市伝説”の経過をたどっている。なお、女の子の自殺の動機は諸説あるが、その後の部分、空き教室に向かった生徒達が皆その部屋から身を投げて死んだ、という部分は同じ。

(つづく)

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