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【理絵子の夜話】空き教室の理由 -034-

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 だったら。
「……心霊写真が撮れましてね」
 理絵子は言った。ある種駆け引きだが仕方あるまい。こっちも知りたい。超感覚で心を覗く気はない。
「なるほどな」
 マスターはさして驚いた様子もない。
 口を開く。
「朝倉は気をつけた方がいいぞ。可愛い女の子を見ると発作を起こす、と聞いたことがある。そのことと、空き教室の自殺には、関わりがあるかも知れない」
 もたらされた新しい情報に理絵子はドキリとした。身体がびくっと震えたかも判らない。
 だが、ことさらに驚くような反応をしてはいけないと強く制する気持ちがあり、ただ頷いた。
「そうですか。だとすれば、“終わっていない”んだと思います。何か、うやむやのまま放置されている。先生は恐らく、本当の本当は知ってもらいたいのに、知ってもらった事による影響が怖くて、口に出せないでいる」
 理絵子は言い、言ってから、恐らくその通りだと自分の言葉を追認した。
 そして、そのうやむやを明らかにすることと、先生の……詳細は不明だがその“発作”は、どちらも自分への挑戦状。
「まだ調べるかい?」
 マスターが尋ねた。
 理絵子は炭酸が喉で弾けるのを感じながら少し考えた。ここに何かを求めるなら、恐らく、深く“沈んで”(作者注:これは理絵子自身の自分専門用語。沸き上がるイメージに埋没し、何者にも邪魔されず、ひたすらにそのイメージを追いかけること。またそのための精神集中)調べないと、肝心な答えには届かないであろう。そして沈むのであれば、例の時間に一人で、の方がよい。
 場所は憶えた。
「いや、いいです。どうもありがとうございました」
 理絵子は頭を下げた。
「大げさだよ。また何かあったら言ってくれ。いつでも力になる。理絵ちゃんに何かあったら俺らはみんなショボーンだ」

(つづく)

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