【魔法少女レムリアシリーズ】14歳の密かな欲望 -03-
「薮原さんが見学です」
受け取った体育教諭は自分同様浅黒く日焼けした体育大学出身27歳。“箱根駅伝”出場の夢破れて体育教師とか以前聞いた。
見学理由ページに目を通し、小脇のバインダーに挟む。後で承認印が押されて返還される。
「今日はストレッチとスタートダッシュ。その後50メートルだが、それでもダメか?」
「内容の問題じゃないので」
「まぁ、そうだな」
と、その時、先の当てこすり男子が呟いたのだが、彼女は聞き逃さない。
「薮原また生理ってぜってーウソだよな。デブだからどんくさいのバレたくねーんだぜ」
それは当てこすりから取り巻き達に対しヒソヒソ声でなされ、応じて取り巻き達が下品にクスクス笑った。何を言ったか判ったのは自分達だけ……と、当人たちは思ったであろう。
彼女は居並ぶクラスメート達を掻き分け、件の男子生徒にツカツカと歩いて行った。
「……なんだよ」
彼女は153センチ、男子生徒は170センチ。“小柄で細っこい日焼け少女”が“大人の男”を睥睨してケンカを売るの図。
「お前は自分の彼女や奥さんに同じことを言うのか?それじゃいつまでも童貞だぜ」
彼女は言ってやった。ただ、それは傍目にはケンカというより大人の男に文句を付ける女の子。どう見ても怖さや迫力とはほど遠い。果たして当てこすり男子は見る間に目尻を下げ、
「うるせぇな。そういうことは生理始まってから言えよガリペタ」
取り巻き達が下品に笑う。相当酷い悪口を言われたことは判るが、事実と異なるのでこちとら痛くも痒くも無い。
彼女はニヤッと笑って。
「夕方の朝顔はしっかりお風呂で皮剥いてカス拭いとけ。当分ただの排水ホースなんだからよ」
「おーっと」
この言い返しに取り巻きが囃し立て、意味を判じた当てこすりが食ってかかろうとしたのだが、取り巻きが制する。彼女はそうなると判っているのでとっくに背を向けて歩き出している。最も、殴りかかって来るなら来いなのだが。
「相原、どうした?」
これは体育教諭。
「いいえ別に。男子なりの苦労もあるようで」
「てめー覚えてろよ!」
いきり立つ。なお彼女の物言いは男性のシンボルがお子様だねぇという下品な内容。図星の場合、怒りのやり場がないであろうとだけしておく。
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