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【理絵子の夜話】空き教室の理由 -038-

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「りえぼー4階でも覗いたのか?」
 教頭の身体がびくっと震えた。
 その瞬間を逃さず、桜井優子が教頭の腕を素早く払いのける。ひっぱたくのに似た、乾いた鋭い音。
 理絵子は思い出した。
 教頭は確か一般教員の時代、この学校に勤務していたことがある。
「私が朝倉先生に関わると、何か困るんですか?」
 カマかけ半分言ってやる。今教頭の意識の中では、やめてくれと必死になってリフレインしている。それは超感覚で初めて判ることだが、その旨は顔に態度に書いてある。
 教頭の唇が震えわななく。しかし声にならない。
 階段を走って上がってくる足音。
 横須賀教諭。
「教頭先生。黒野さんに賭けてみましょう。お父様の仕事が仕事ですし、何かあればすぐ対処できます。私が一緒に行ってきます。……黒野さん、車呼んでるから準備して、ああ、桜井さん、これクラスへ……」
 横須賀は理絵子の持っていた出席簿を桜井優子に押しつけた。
「オレ?」
「女の子がオレなんて言わない。糸山(いとやま)か、後から大江(おおえ)先生がいらっしゃるから、どっちかに渡して。じゃぁ黒野さん下で」
 横須賀教諭はそれだけ言うとあたふたと階下へ降りていった。ちなみに糸山というのは理絵子のクラスの男子学級委員である。
「優子ごめんね……ちょっと朝倉の家に行ってくる」
 理絵子は言った。桜井優子は状況を把握したらしく頷いた。
「ああ、判った」
 下から横須賀の呼ぶ声がする。
「今行きます!……ってせっかちだね」
 理絵子は下駄箱へ向かった。
 靴を履き替えて屋外から職員室前玄関へ走る。横須賀は急かしたが、タクシーが来たのは理絵子が玄関へ着いてより5分後。

(つづく)

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