« 【魔法少女レムリアシリーズ】14歳の密かな欲望 -01- | トップページ | 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -037- »

【理絵子の夜話】空き教室の理由 -036-

←前へ次へ→

 自分を見る教員達の目が一斉に見開かれた。
 一様に驚愕、とでもするか。誰も考えつかなかったのか?と理絵子は逆に驚いた。そしてひょっとするとこいつら(!)、“家庭訪問”は、イコールダメダメな生徒の家を教員が訪れるもの、という一方通行な固定観念があって……
 否。
 
 発作を起こした朝倉には近づくな、という暗黙の共通認識。
 
「教頭先生」
 呼んだのは教頭より少し年下の女性教員。理科担当の横須賀。
“たこぶえ”メンバーからも出て来た名である。その理由は生徒の間では“一言多い”うるさ方として嫌われ者だから。
「彼女……朝倉さん日頃高く買っていらっしゃるし……ひょっとすると」
「行かせるんですか?この生徒を?授業受けさせず?」
 目を剥く教頭。
 そのセリフに理絵子は、ここにいる誰もが、担任の部屋に行きたくないのだと察知した。
 つまり過去に同様の例があったということ。それは尚のこと、マスターの言った“発作”とその過去例が同一である可能性が高いことを示唆する。そして恐らく、その状態は、担任にとって最も助けを必要とする状態でもあるだろう。週末の担任の恐れ縮こまりぶりを知る身にとって、誰も行かないのは単純にかわいそうであるとも思う。
 伝家の宝刀。
「私の担任です。心配です。私行ってきます。何かあれば父を通じて動いてもらうことも出来ます」
 理絵子は居並ぶ教員達にくるりと背を向け、スタスタと歩き出した。
 考えてみればひでー奴らである。生徒には命を大切、思いやりとか言うくせに、当の自分たちはこれかい。
 背後で教員達がバタバタ始める。自分が朝倉宅へ向かうと判断したようである。行かせるだの止めるべきだの誰が同行するんだだの。

|

« 【魔法少女レムリアシリーズ】14歳の密かな欲望 -01- | トップページ | 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -037- »

小説」カテゴリの記事

理絵子のスケッチ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 【魔法少女レムリアシリーズ】14歳の密かな欲望 -01- | トップページ | 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -037- »