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【魔法少女レムリアシリーズ】14歳の密かな欲望 -02-

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「姫ちゃん……」
 そうと理解して声を掛けてくれたのは、後ろの席に座っている溝口智恵美(みぞぐちちえみ)という娘だ。仲良しで毎朝一緒に学校に来ている。振り返ると色白で食の細そうな顔が今にも泣きそう。姫ちゃん、というのは彼女の出席簿上の通り名が相原姫子(あいはらひめこ)であることに基づく。仲良しにはこの「姫」で呼んでもらっている。
「ありがと。大丈夫だよ」
 彼女姫子はニヤリとばかり笑って答えた。その顔立ちは幼さを残した感じで、“ころん”とした印象を与え、原宿を歩いているとスカウトされるが、“夫がいるので”と言うとびっくりした表情で引き下がって行く。屋外で走り回る時間が長かったせいか、応じて日焼けしており、溝口と一緒にいると相対的により目立つ。体格含めて“精悍だ”という印象を持たれることもあり、ひところ陸上部が興味を持ったという話も聞く。その“夫”予定者に言わせると“小柄で細っこい日焼け少女”という萌えカテゴリなんだそうだ。言われるとゲンコツで殴るようにしている。
「ポニテ、崩れてるよ」
 着替え終わったところで溝口が言った。その“屋外活動”で支障しないよう髪の毛はバッサリ短髪だったが、転入して制服着るようになってから伸ばし始めている。汗を掻くとまとわりついて鬱陶しいので、たくし上げて小さなポニーテールにしている。
「ありがとう」
 結び直してもらってグラウンドへ出て行くと、ブレザーの制服を着たままの娘が一人。転入当日、自分のことを“面白い”と言って笑ってくれて意気投合した。名字を薮原(やぶはら)という。お菓子大好きで応じた体型。
「あの……」
 薮原は姫子に生徒手帳を差し出してきた。
「お休み?」
「うん」
 浮かない顔。そういえば今朝は彼女の爆笑を聞いていない。
 “生理のため見学します”
 体育の見学は生徒手帳にその旨記入し、親のハンコをもらい、保健委員が確認して担当教諭に提出するルールだそうな。仰せつかっているのでジャージ姿の男教諭の元へ持参する。

(つづく)

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