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【理絵子の夜話】空き教室の理由 -037-

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 だんだん腹が立ってくる。この事態にそんなことどうでもいいではないか。
「君待ちなさい。理由が何であれ授業を放棄することは許されない」
 廊下に響く教頭の声。
「命に関わることでもですか?」
 理絵子は振り返り、それだけ言い返した。
「なにっ!君まさか週末……」
 なんだその言い草。自分が担任に何かしたとでも言いたいのか。
 誤解曲解一知半解。
 呆れて情けなくなる。大人ってどうしてこう、全然考えてもいない方向から絡んでくるんだろうか。ハナから疑ってるから、次々に絡む理由を探すのか。
 教頭は走って追ってきた。
 妙に必死だと気付いた次の瞬間、背後から腕を捕まれる。
 痛い。
 それは教員と生徒、それ以前に男が少女に及ぼす力ではない。
 指が食い込む。尋常ではない。
 理絵子は振り返る。超常感覚をスタンバイの状態として、腕をつかみ引き留める教頭を振り返る。
“燃える目”……教頭が自分の目に対して抱いたイメージ。
 自分がいわゆる眼力を発揮しているのだと理絵子は気付いた。
 あちこちの教室のドアが開いており、生徒達や、朝のホームルームで訪れた教員達が廊下の出来事を見ている。
 男と少女、分が悪いのは明らかに教頭の方。
 さらに。
「おめぇ、なにやってんだよ」
 右方階段より声が掛かる。カカトを踏みつぶした上履きでペタペタ登ってきたのは桜井優子。
「穏やかじゃねぇな」
 風船ガムを膨らましてパチン。

(つづく)

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