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【魔法少女レムリアシリーズ】14歳の密かな欲望 -01-

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 “家庭訪問”なるイベントがあると知ったのは3年生になって間もなくのことだ。配られたプリントには、合わせて高校受験の説明など親を交えて三者面談をする、とある。
「相原(あいはら)さんは初めてだと思うけど、何か質問とかありますか?」
 キュロットスカートが似合いの担任奈良井(ならい)が少し心配そうに訊いてくる。まだ、“相原さん”と呼ばれることに慣れきっていないせいか、自分のことだと気付くまでに少し要した。
「え、いや、はい。……自分の部屋、つまり私の部屋にも来られると言うことですね?」
「そうです。難しい場合は普段学習に使っている環境を確認させてください」
 担任は、日本の習慣に不慣れな自分が、“自室に他人を入れること”に抵抗を持つのでは?と考えたようだ。
 いきなり教員がズカズカ上がり込んでくるのは少々、如何なモノか、という思いはあるにはあるが、既に部屋にあげた友達はあるので、“人に入られて困る”ようなことはない。
「判りました。大丈夫です」
「そう。後でも判らないことあったらまた訊いて下さい。じゃぁ1限目は体育でしたね。先生引き上げまーす」
 奈良井は出席簿を抱えてそそくさと教壇を降り、教室前方のドアから退出した。
 教室内がにわかに騒がしくなり、生徒達はめいめい机の脇にぶら下げた巾着袋を手にして席を立つ。巾着袋の中身は体操服であり、男女に分かれて更衣室で着替えて、という流れ。
「1限目体育とかバカじゃねーの?誰だよ設定した奴クソだりー」
「主任の森本(もりもと)だろ。2年の3学期に転入生放り込むとか平気でやるしよ」
 男子達の刺すような声。“2年の3学期の転入生”は他ならぬ自分である。当てこすりであると彼女は理解した。この3ヶ月余りでクラス内外に友達・理解者たくさん出来たが、逆に“ムカつく”という意思表明をする向きが男女問わずいるのも承知している。むしろ万人受けする方がおかしい。

(つづく)

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