【魔法少女レムリアシリーズ】14歳の密かな欲望 -04-
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さて家庭訪問・進路面談となった場合、一般に生徒とその親がぶっつけ本番で教諭と対面することはあり得ない。親子の意見と教諭向けの見解を事前にすり合わせるというのが普通だ。
但し彼女の場合。
「私が日本に来たいきさつを、それなりに納得してもらえる内容で説明する必要があると思うんですよ」
彼女は座卓代わりにしている布団を外した炬燵に横座りし、湯飲みのお茶を飲んだ。
「そうねぇ」
お知らせプリントを手にした白髪混じりの女性が呟く。相原 香 。彼女の夫候補の母親。
「無難なのはイトコかハトコか」
隣に座る眼鏡の男が言った。夫候補、相原 学 。22歳。すなわち彼女の7つ上。宇宙機のエンジニア。
「“実家”は、言ってもいいよとは言ってますが」
実家、と彼女が指さしたのは卓上のタブレット端末である。画面には東洋系の女性と、比して碧眼に顎髭の男性が映っており、軽く微笑みを浮かべている。
欧州が宗教紛争に明け暮れて以降、魔術を持って仲裁の任を担って来た欧亜国境の小国、アルフェラッツ王国の国王夫妻である。
彼女はその娘である。本名をメディア・ボレアリス・アルフェラッツ(Media Borealis Alpheratz)という。称号は北天の花冠。要するに魔法の国のお姫様、すなわち魔女である。ただ、21世紀科学文明にあって“魔法で仲裁”など生じるわけもなく、彼女は王家を引き継がないと決断し、応じて結婚前提で日本に帰化した次第。相原姫子はそれに応じた仮の名である。なお、原宿でスカウトされる……日本にいて異国の出自と見られないのは、先祖が魔術を会得したパルミラの巫女だったからとされる。新約聖書に出てくる“東方の博士”の末裔を名乗って列強に売り込んだとも。
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