【魔法少女レムリアシリーズ】14歳の密かな欲望 -06-
翌日。
初夏の兆しも見えて日射しの強い日。
家庭訪問週間は、授業は午前打ち切りとなり、午後に教員が駆けずり回る。
“今日巡る家庭では最も学校に近い”ということで、最後になった姫子の居所に、担任奈良井は予定より30分遅れて現れた。
呼び鈴が押される5秒前に玄関ドアを開けると、奈良井は驚いたように往来から顔を上げた。少し疲れているように見え、そして暑いのだろう、脱いだカーディガンを小脇に抱えている。迎える姫子は水色の半袖ワンピース。
「ごめんね、遅れちゃって」
「いいえ。順調に遅れるから焦るなと、叔母……ですが母と呼んでおります。母から聞いてましたので。どうぞ」
姫子は話しながら玄関前の4段を降り、門扉を開けて奈良井を招き入れた。5~6軒ずつ7日に分けてと聞いている。先に終わった友人達からしんどかった、という話は聞いていたので、日々しんどい×5の担任の負担は相当なものであろう。
玄関には相原香が迎えに出てきた。
「遅れまして申し訳ありません。担任の奈良井と申します」
「いいえお疲れ様です。姫子の叔母に当たります相原香です。どうぞお上がりください」
相原香は玄関マットにスリッパを並べる。玄関から廊下を真っ直ぐ突き当たるとリビングであり、その扉は閉じられ、比して途中左手の襖が開かれているのが客間である。
その客間から、廊下を挟んで向かい側、2階に向かう階段途中から見ている三毛猫。
尻尾を緩く左右に振っている。一般に猫が尻尾を動かしているのは苛立っている証左とされるが。
「あら、猫ちゃん」
「何?お水?」
靴を脱ぐ奈良井の背後から姫子が声を掛けると、猫は素早く階段を駆け上がって姿を消した。
「逃げられちゃった」
「嫌ってるわけじゃないと思います。お茶をお出ししたいのですが、温かい緑茶、冷たいウーロン茶、どちらがお好みですか?」
「……規則でご遠慮、と言いたいけど、正直に温かいお茶を下さい。あちこちで冷たいの出していただいてお腹が冷えそう」
苦笑する奈良井に姫子は笑顔で応じた。
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