【魔法少女レムリアシリーズ】14歳の密かな欲望 -08-
“捏造”しながらなので、姫子は目線を外して話していたのだが、昨日の作戦と辻褄が合ったな、と思って顔を戻したら、奈良井は涙ボロボロであった。
「先生?」
「ごめんなさい取り乱して。ご両親と離れてなんて初めて聞いたので動揺してしまって……」
みんなを笑わす日常の言動は、無理して気丈に振る舞っているのではないかと心配、と奈良井は付け加えた。要するに『可哀想な境遇ね』ということなのだが、作り話なので悲壮感は無くて当然で気丈もへったくれもなく。要するに先生嘘つきでごめんなさい。でも本当の素性をお話しするわけには行かない。
「今は大丈夫です。香お母さんがいて、クラスにたくさんの友達も出来ました」
ニッコリ笑う。わざとらしいが仕方がない。
「本当に?」
「ええ。そんなわけで人間関係は逆に恵まれています」
「本当ね。じゃあ、時間もないので次に行かせて下さい。卒業後の進路ですが、今聞いたお話しだとやはり看護師さんかな。14歳の密かな欲望ってところを教えてくれるかな?」
奈良井は少し軽い調子で尋ね、湯呑みを手にした(なお、密かな……が、昭和年代の歌のタイトルをもじったものだと姫子が知るのはかなり後のこと)。
合わせて、“母”香がこちらを見る。え?決まってるの?ああ、そういう先のことは話したことはなかったか。後で謝って説明しなきゃ。
姫子は奈良井を真っ直ぐに見、
「心臓外科医」
「え!」
それは奈良井に取って非常な驚きを与えたようだ。手元ビクリと大きく動き、湯呑みの茶をひっくり返した。座卓からお茶が流れてキュロットスカートに染みを作って行く。
「ああ!すいません!」
奈良井と姫子は同時に言った。
「お母さん雑巾は」
「そんな相原さんが謝ることでは……」
「先生それアイロンをサッとやっちゃうので脱いでらして。姫ちゃん、私の部屋に野暮ったいジャージがあるから先生に穿いていただいて。確かこの後生徒の部屋に入って秘密のお話、ですよね」
母親がテキパキ指示。
「え、ええ、でも……」
「そのままじゃオシッコ漏らしたみたいですよ」
かくして、白い三本線の入った青いジャージのズボンを穿いて、奈良井は階段を上がっていった。生徒の部屋に入るのは学習環境の確認がお題目。“秘密のお話”は学校側が把握している生徒の素行や評判に基づき、より伸ばすところと改善すべきところを“こっそり”伝える場で、二人きりで行うのだという。
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