« 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -051- | トップページ | 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -052- »

2025年4月23日 (水)

【魔法少女レムリアシリーズ】14歳の密かな欲望 -09-

←前へ次へ→

 3

「どうぞ」
 姫子は内開きになっている木のドアを開いた。猫が出入りするので少し隙間を開けており、ノブを回す必要はなく、押すだけ。
「失礼しますね……あら、さっきの猫ちゃん」
 調度はシンプル、というか、14の娘の部屋としては何もないと言った方が良いかも知れぬ。押入れ引き戸はドアと同様木目で、床もフローリングですなわち木。天井と壁紙は白。部屋の過半を塞ぐベッドと、丸テーブルにイス。ベッドの向こう、北側に出窓があって、小ぶりな銀色のオーディオ装置と、その両脇を挟むスピーカーシステム。銀色装置に座っている件の猫。
「寒いなり暑いなりあんたアンプの上好きだねぇ」
 姫子が言ったら猫は口だけ開いた。ニャァという口まねをしているかのよう。
「これで本人は声を出してるんですよ。超音波領域になっているので人間には聞こえないだけ。親愛の情です……」
 姫子は振り返って奈良井に説明しようとし、その瞠目に気がついた。
「殺風景だって驚かれてますか?日本の“カワイイおへや”を知らないんです私。どうぞ、そちらの椅子に。あ、パソコン邪魔ですね」
「あ、ええ、ありがとう」
 姫子はテーブル上のノートパソコンをベッドに動かし、奈良井に着席を促した。
 奈良井は椅子に腰掛け、テーブル上にノートを広げた。
「ごめんなさい。お母様にはお手間を」
「いいえこちらこそ。まぁガキの分際で看護師言うなら、当然成人したらガチ看護師になりたいと答えるのが普通ですからね。なのに何故か説明した方がいいですかね」
 奈良井は気を取り直して、とばかりにペンを持つ。
「そう……ですね。えっとまず、医師となると大変な学力を要求されます。勉強の計画はどの程度?」
 姫子はベッドを立つと、その下に格納されていたキャスター付きの物入れをガラガラと引き出した。
 英語背表紙の専門書がズラリ。
「こっちは先に現物色々見てきたので、医師はどこを見て何をしていたのか、その補填をしてます。基礎学力については、日本語喋れますけど教科書で習ったわけではないし、数学と理科は弱いと自覚があるので、クラスの得意な人に教えてもらいの塾に通いので水準を高めようとしています」

(つづく)

|

« 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -051- | トップページ | 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -052- »

小説」カテゴリの記事

小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -051- | トップページ | 【理絵子の夜話】空き教室の理由 -052- »