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2025年7月 9日 (水)

【魔法少女レムリアシリーズ】14歳の密かな欲望 -17-

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「あんだって?ウンチでろ?」
「あら流石にお怒りのようですねぇ。お得意の“魔法”か?その糞犬がウンチでも噴くんか」
 ゲラゲラ笑う。お望み通り魔法を使えば一発解決だが問題は自分の感情が怒りに支配されていることだ。
 必要以上、の、結果が出る。魔法は魔女の意図を忠実に成就させる。
 ちえちゃんに見せるもんじゃねぇ。
 ムクが吠え掛かる。
「おお、強い強い。どうすんだビッチ」
「念力出すかぁ?」
 ゲラゲラ笑う。が、
 そのセリフに対して、示唆があった。ムクが何かに気付いたように地面に伏せ、幾らかの鳥が鳴きながら飛び上がる。
「出しゃいいか」
 彼女は、言った。
「はぁ?」
 彼女は思惟に浮かぶままに次のように唱えた。
「りん・びょう・とう・しゃ・かい・ちん・れつ・ざい・ぜん」
 臨・兵・闘・者・皆・陳・列・在・前。真言密教の護身の呪文である。実際には合わせて指先で特定の形 (印契いんげい ) を作ったり、空中に特定の模様を描く(九字を切る)が、彼女は口元に揃えた指先に向かって九字を唱えると、その指先で横一文字に空を切った。それは最も弱くした魔法の発動。
「ぎゃはは!何言ってんだオマエ」
「かいちん、だってよ。ちんちんかいかい」
 刹那。
 大地自体が大砲となったかのようにドーンと大きな音が響き、地面の下から一発突き上げるような震動。
 地鳴りを伴う地震である。ズドンと一発という塩梅だが、震源が浅いので振幅自体は大きい。雑木林は木々が軋み、木の葉散らしながらバサバサと鳴動し、土煙が舞い上がり、鳥たちがぎゃぁぎゃぁ鳴きながら飛び上がった。
「余震だ」
 誰かが言い、防空壕の入り口がぐにゃりと縦長に歪み、その頂部から亀裂が生じて斜面の上の方へ走るように伸びて行く。程なくザワザワした黒い絨毯のようなモノが洞窟の中からしみ出すというか、あふれ出すように出てくる。
「虫だ!」
 件のカマドウマである。形態としては翅をむしったキリギリスであるが、茶色いナッツの実に足と触角を生やした、と書けば手っ取り早い。湿った暗がりを好む性質があり、そのため防空壕洞窟内にびっしりと貼り付いていたのだが、大地の異変で外へ出てきた。

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 そして。
「やばい逃げ……」
 この時点、未曾有の災害である東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)より2ヶ月。応じた大きな余震の可能性は誰もが知っており、そして、都下においてその揺れと繰り返された余震は、この古い穴にダメージを与えていたであろう。

(つづく)

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