【理絵子の夜話】空き教室の理由 -70-
母親は言った。
「あ、はい。どうも」
担任が頭を下げ、母親は会釈して部屋を辞した。
理絵子はその間に、自室より父親に電話した。自分に訪れた2つの事象が偶然でないなら、“未遂”である以上、2度あることは……の可能性があり、先手を打っておく必要があるからだ。なお、理絵子から父親へ携帯to携帯で掛けるのは、緊急の場合に限るとの約束にしている。
少し鳴らして、父は出た。
『どうした』
「2度殺されかけた」
『……大丈夫か。何か確証があるのか?』
「一件は駅で突き落とされた。こっちは警察を呼んだから書面で出ると思う。もう一件は暴走車に突っ込まれた。こっちは自分たちでとっとと逃げたよ。タイヤの跡は残ってると思うけど……ちなみにお父さんって、ウチの学校で女の子が暴走族の抗争がらみで自殺って事件に……」
『ああ関わった。だが幾ら娘でも話すわけにはいかないな。そこは刑事ドラマじゃない。勘弁してくれ』
しかし理絵子はかまわず続ける。
「そのトラウマが担任にあるらしいの。恐怖で発作を起こしてしまう。取ってあげたくて調べているうちに私にとばっちり。杞憂ならいいんだけどね。無関係にしては偶然すぎる気もして。教頭の影もチラホラしてるし」
『教頭?』
父親は乗ってきた。
「事件の際学年主任だった」
『そういうことか』
「何か思い当たることない?」
誘導尋問。娘である。父親が自分に甘いことはよく知っている。
『折角障害を取り除いてやったのに自殺なんかしてと悪態を……おっと、こら』
「ごめんなさい。でもそういうことで気に掛けておいてくれると安心出来る」
『判った。ああひとつだけ。その教頭が、誹謗中傷の手紙が来たと被害届を出していた』
「誹謗中傷?」
『その少女を死に追いやったのは教頭本人だ、という内容のな。教頭がシャカリキになって怒るんでアホくさと感じたのを覚えている。とはいえ少女の死に関して未だに何か動きがあるのかも知れない。そうなるとお前も危険だという見方は出来るな』
父親のその言は、真相を探る理絵子をうさんくさく思い、排除しようとする人間が存在するのではないか?という意味だ。理絵子が邪魔なのか、あるいは知られては困ることがあるのか。







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