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2025年8月 9日 (土)

【理絵子の夜話】空き教室の理由 -67-

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 猛然と近づき、交差点をこちらへ折れてくる。
 改造されたアメリカ車である。極端に車高が下げられ、ボンネットには自衛艦よろしく塗装により旭日旗。後部の排気管は宇宙へでも飛んで行くかのように天を向いて突き出している。形状の類似から“竹槍マフラー”。
「やーね、暴走族よ。……まさかあれもまた」
 理絵子は気付いた。この“暴走”は請われて故の必然から。
「かぼちゃの馬車です」
「は?」
「その迎えの友達ですよ」
 猛烈なクルマは二人の前に止まった。
「マサさん」
「ようりえちゃん、せんせー。待たせたな。乗んな」
 左側運転席から特攻服の男が顔を出した。
「しかしスゴイね」
「優子の指定だよ。これだけコワモテなら手を出すバカもいねぇだろうからってよ。バカをもってバカを制す……ってどういう意味だい?」
 担任は唖然として絶句の様子。
 理絵子は失礼と思いつつ、超感覚の状態を確かめるため、担任の心理を探ってみる。

 暴走族と付き合いのある少女。

 つまり担任は、自分のことごとくがあゆみに重なることに、驚愕と躊躇を感じている。
「私が二宮あゆみさんと同じ軌跡を辿っているのだとしたら、何か大きな意味があると思うのです」
 理絵子は言った。
 担任がハッとした表情で自分を見る。
「ただ、私と彼女が違うのは、私はいろんな人に守ってもらっているということ」
 理絵子はまっすぐ担任の目を見返した。
「今私のなすべきことは、先生を私の家に送り、母親と家の警備装置に委ね、安心して休んで頂くこと」
「そそ、なんだか判らないけど、乗りな、先生」
 マサはドアを開けて一旦下車し、背もたれを倒した。2ドア車なので、後席に乗り込むにはこうする必要がある。
「……そうね」
 担任は一瞬の間を置いて理絵子に言った。
「私はあなたに救われたもの。一緒だけど、そこは違う」
 担任は言うと、意を決したようにクルマの後席に潜り込んだ。
 理絵子も隣へ。外見と音が猛烈ならインテリアも猛烈である。ダッシュボードには鳥居と神社の模型があり、天井クロスにはやはり旭日旗が「君が代」の歌詞と共に描かれている。いつぞやインターネットで見た、妖怪イラストに埋め尽くされた軽自動車に匹敵する猛烈ぶりである。

(つづく)

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