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アルゴ・ムーンライト・プロジェクト -030-

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 唸る音がし、ドアが開きだす。接触音の正体は、原動機の出力軸が開閉システムに接続される音だと知れた。揚水ポンプとか、発電機とか、EFMM活動現場でも似たような音は聞く。それに比して要したパワーは桁外れに大きい。
 巨大なエネルギーをこの船は蔵する。レムリアは確信した。
 動き出したドアパネルの合わせ目にスリットが入る。
 左右にスライドし、ドアが開いて行く。中は、金庫ではなく、青白い高輝度ランプの照らす空間。
 まず目に付くのは、左手にそびえる大きなスクリーン。その印象は映画館。
 ただ、劇場と違うのは、スクリーン前は客席が並ぶのではなく、スクリーンの横幅いっぱいに広がる長いコンソール(操作卓)。その卓上にはボタンとレバーと、埋め込まれた小さな画面たち。並ぶイスにはレーシングカーで見るような安全ベルトと、背もたれには酸素マスクが掛けられている。それらはむしろ〝映画の中〟。
 やはり映画に出てくるような宇宙船か。
「魔女さん。初めまして」
 重心の低い男の声があった。
「アルゴへ、ようこそ」
 声の方へ顔を向ける。大きなガラスのテーブル……画面が上に向いた液晶テレビ……があり、男が四名、ずらっと並んで立っている。出自国籍は自分同様に招聘を受けたようで様々。
 ただ、北欧系と思われる金髪碧眼の二人は、どうやら双子のようだ。
「私が船長のコールサイン〝アルフォンスス〟だ。レムリア殿」
 アフリカ系で彫りの深い顔立ちの男が言った。自分の倍はあるのでは?と思うような、極めて大柄な男であり、ワイシャツネクタイに迷彩服。格付きの軍人と見える。但し衣服の下には筋骨の鎧の存在を感じさせ、デスクワークよりは現場側の叩き上げという印象を受ける。
「この殿方達は、あなたと同じく、私どものお願いに応じて下さった〝超絶の人々〟です」
 耳の後ろでセレネが言った。
「オレは、違うがな」
 笑ったのは〝アルフォンスス〟の向かって左側、小柄で浅黒い肌の持ち主。少々脱毛が進んでおり、広くなった額に深いシワ数本。口ひげを蓄え、陽気な雰囲気。言葉にはイタリア訛り。インターホン越しの男性と判じた。
「奇蹟の天使の手助けをするために、わたくしは皆さんのお力添えを頂きたく、ここへお集り願うことにしました」
 セレネは張りのある声で言い、レムリアの背後からするりと歩み出、男達の中に加わった。
「あなたの、超絶の力を貸して下さい。レムリアさん」
 気付く。船長なる男性は自分のことを魔女と呼んだ。
 超絶の人々。奇蹟の天使の手助け。
 看護師、としてではなく?
「両方です」
 セレネは言った。レムリアは思いを意識に浮かべただけだが、思いの答えは言葉で来た。
 レムリアが、そのことに気付くのは、今少し後。

(つづく)

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