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2025年8月20日 (水)

【魔法少女レムリアシリーズ】虫愛づる姫と姫君 -03-

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「はっはっは!本当に面白いねあなたは。嫌なら断っておこうか?」
「いえ、今後も顔を合わせるわけでその都度気まずいですし、別の誰かがターゲットにされたら」
 すると、奈良井は小さくフッと息をつき、笑みを作った。
「あなたは、誰かのために動いてくれる子ね」
「そんな大袈裟な。断って別の誰かが押し付けられたら恨みを買うの自分ですもん」
 言って気がつく。だから彼奴は皆前で言ったのか。森本おんどりゃあ。
「まぁ、手に負えないと思ったら来て、私からも言うから」
「ありがとがんす」
 小さく吹き出す声を聞きながら教室を出る。がんす、は好きで使っているが、福島出身という諏訪に岩手の方言と教えてもらった。姫子にとって日本語は“知ってる言語のバリエーション”の一つに過ぎず、方言の存在は日本に繁く来るようになって初めて知った。他には大阪、名古屋や福岡の方言を適当に混ぜて使うのが最近のマイブーム。
 職員室のドアをコンコン。
「失礼します」
 と、引き戸をガラリと開くと、待ってましたとばかり立ち上がる恰幅体躯。差し込む西陽に整髪料と額がギラギラテカテカ。
「いやー待ってたよ来てくれないかと思ってなぁ」
 無駄に声が大きい。衆目が集まる。
 何だこの、そこはかとない恥ずかしさ。
「生徒相談室で話すよ。ついて来てくれ」
 それはどうやら一年生教員の島(執務机を学年ごと集めてあって、島と呼んでいる)に、生徒が数名いることから、聞かれては困ると考え、方針を変更したのだ、と判じた。多少なりとも個人情報を隠してあげようという配慮だろうか。すると。
「え?姫先輩?」
「やっぱ陸上やりません?」
 その数名の生徒のうち、細身の娘2人に呼び止められる。彼女姫子は小柄で華奢だが、炎天下をキロメートルの単位で走り回るということを数年間続けて来た。
 その結果、日本に帰化した時点において、並の女子生徒じゃ相手にならない韋駄天の持ち主になっていたらしく、5月の運動会で徒競走を目撃した陸上部が物凄い勢いで誘いに来た。で、この子らは一年の部員。
「ありがたいけどムリムリ。おバカだから放課後は塾に漬物」(缶詰じゃないのか姫子よ)
「えー、残念ー」
「絶対総体無双できるのに」
 総体。東京都の総合体育大会のこと。
 このやり取りに目を剥いたのは森本。
「そんなに速いのか君は」
「そうらしいです無自覚ですが」
「ほう。あ、君たちちょっと相原さんは用があるんだすまんね」
「はーい」
 会話を遮られて不承不承、彼女たちは姫子から目を外した。

(つづく)

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